世界にはいろいろな文明がある。グローバル社会では、それぞれの行動様式や価値観を踏まえて行動することが求められる。社会学者の橋爪大三郎氏は「たとえばイスラム世界には、法人が存在しない。ビジネスを進めるうえでは、その背景にある宗教の考え方を知ることが必要だ」と説く——。
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イスラム文明の価値観

イスラム教徒は、およそ15億人。キリスト教徒25億人についで、人数が多い。人類社会の、重要な構成員である。

しかし日本人は、イスラム教になじみが薄い。イスラム教徒があまり、日本にいなかったからだ。

ヨーロッパには大勢のムスリムがいる。インドにもいる。中国にも、イスラム教徒はいる。街を歩くと「清真餐庁」と看板が出ている。ハラールの食事をだす、イスラム・レストランのことだ。

橋爪大三郎『4行でわかる世界の文明』(角川新書)

イスラム教徒は、イスラム法に従う。食事のルールがあって、ブタ肉ほか、食べていけないものがある。アルコールもいけない。服装にもルールがある。暦も独自のイスラム暦である。1日5回、メッカに向かって礼拝をする。日本人からすると、なんて窮屈なんだろう、である。ムスリムの人に聞くと、「子どもの頃から慣れていて、なんでもありません」だそうだ。

世界にはいろいろな文明がある。主なものでも、西欧キリスト教文明、イスラム文明、ヒンドゥー文明、中国儒教文明、とさまざまだ。それぞれ、人びとの考え方や行動様式が異なっている。前提となる価値観も違っている。グローバル社会では、それを踏まえて行動することが求められる。