西欧の人は法律にうるさい。なぜなのか。社会学者の橋爪大三郎氏は「それは彼らがキリスト教徒だからだ。海外の人たちの行動や考え方の背景には宗教がある。その特徴はどの宗教でも4行で説明できる」という——。
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キリスト教と法律はどうつながっているか

西欧の人びとと仕事をすると、法律にうるさくて、やれやれと思う。

まず、契約書。細かくて分厚い。顧問弁護士。すぐ裁判。職場のマニュアル。株主への説明責任。年次計画。ポリシーペーパー……。これを全部、まじめにやるのは大変だ。

西欧諸国は、キリスト教国でもある。「キリスト教は、仕事に関係ないな。最近彼らも、教会には行ってないようだし」で済ませてしまうと、厄介なことになる。

法律にうるさいことと、キリスト教は、どういう関係があるのか。

じつは、ここが急所だ。この急所がわからないと、西欧キリスト教文明がわかったことにはならない。ビジネス・パートナーのことがわからなければ、仕事にも支障がある。

橋爪大三郎『4行でわかる世界の文明』(角川新書)

考えてみれば、彼らは法律のかたまりだ。アメリカも憲法がつくった。フランス革命も憲法とナポレオン法典だ。イギリスは、不文の憲法をもっている。なぜキリスト教徒は、法律を信頼するのだろう。

それは、彼らが「自由」だから。自由と自由が衝突しないために、垣根のように法律がある。法律の内側は自分の権利。法律が守っている。法律の向こうは不法行為。相手の領域なのである。

じゃあなぜ、彼らは「自由」なのか。それはGodが、彼らを造った(ことになっている)から。一人ひとり、別々に造った。平等に造った。そこで誰もが等しく、幸福に生きる権利(基本的人権)をもっている。