世界の文明の本質を取り出す「4行モデル」
さて、ここまでは、みな一神教の話だった。ちなみに、インドの、ヒンドゥー教の人びとは、こんな具合だ。
ヒンドゥー文明の人びとの、4行モデル
(1)まず自己主張する。
(2)相手も自己主張している。
(3)このままだと、紛争になる。
(4)みんなばらばらな法則に従っているので、大丈夫。
(1)まず自己主張する。
(2)相手も自己主張している。
(3)このままだと、紛争になる。
(4)みんなばらばらな法則に従っているので、大丈夫。
この法則は、人間がつくったもの(法律)ではない。宇宙にそなわっていて、変えられない。ヒンドゥー教の根本だ。
みなバラバラに法則に従っている。それが、カースト制である。職業も別々で、結婚もしない。なるべく無関係に暮らすので、紛争が防がれる。
これだと社会がバラバラになってしまわないか。人間が死ぬと、Jリーグの入れ替え戦みたいな考え方で、上のカーストに生まれたり、下のカーストに生まれたりする。これが輪廻。人間はみな、輪廻の法則に従っているのだ。
儒教は「順番があるので、大丈夫」
中国の人びとは、どうか。
中国には、道教や仏教もあるが、中心は儒教だ。儒教は、中国社会の骨組みをつくった。儒教を生きる人びとの考え方や行動様式は、こんな具合だ。
儒教文明の人びとの、4行モデル
(1)まず自己主張する。
(2)相手も自己主張している。
(3)このままだと、紛争になる。
(4)順番があるので、大丈夫。
(1)まず自己主張する。
(2)相手も自己主張している。
(3)このままだと、紛争になる。
(4)順番があるので、大丈夫。
順番は、誰が偉くて、誰がその次で……と決まっていること。偉いひとの言う通りにするので、紛争が防がれる。
儒教とは、要するに、中国のあらゆる人びとのあいだに順番を配給するメカニズムである。中央では、政府の役人のあいだに、下級/上級/……の順番を。末端では、親族のあいだに、長幼の順番を。
そこで、中国全体で「1番」のひとが、どうしても必要になる。昔は皇帝、いまは習近平だ。
こんな具合で、4行モデルはシンプルだが、世界の主な文明の本質を取り出すものだ。これさえあれば、世界の理解はぐんと容易になる。……かどうかは、『4行でわかる世界の文明』(角川新書)でお確かめください。