中間層の絶大な支持を受けて当選したオバマ大統領がなぜ「100年に一度の危機」に対して抜本的な金融改革をなしえなかったのか。本書はこの疑問に数多くの具体例を挙げて答えてくれる。一言でいえば、オバマ大統領はもともと「『草の根』の生活者」(8ページ)側の人間ではなく、ウォール街の代弁者なのだ。

オバマ大統領の経済閣僚人事一つとっても、素人目には不可解なことだらけだが、彼が米金融業界と昵懇であることを踏まえてみればすべて腑に落ちる。クリントン大統領時代の「マーケットの三銃士」(178ページ、当時の肩書でルービン財務長官、その後任のサマーズ長官、グリーンスパンFRB議長)が「金融市場の規制緩和を促進、史上最大のバブル膨張の基礎を築いた」(同ページ)張本人であるにもかかわらず、オバマが経済・金融問題を「新マーケットの三銃士」(180ページ)に委ねた。サマーズに加えて、ルービンの寵愛をうけたガイトナー、そしてグリーンスパン時代にFRB理事だったバーナンキの3人である。