対立激化の責任は、韓国にあり

ところが19年8月2日に日本政府がホワイト国から韓国を除外する政令改正(7日の政令公布を経て28日施行)を閣議決定すると、文大統領はさらにヒートアップして日本政府を激しく非難した。

「問題を解決するための外交的努力を拒否し、事態を一層悪化させるきわめて無謀な決定であり、深い遺憾の意を表する」「これから起きる事態の責任が全面的に日本政府にあるという点をはっきりと警告する」「厳しい状況にある我々の経済に困難が加わった。だが我々は二度と日本に負けない」「加害者である日本が盗っ人猛々しく騒ぐ状況を決して座視しない」

文言の端々から文大統領の本性が滲んでくる。

朴槿恵前大統領の弾劾・罷免を受けて2017年に行われた大統領選挙で文大統領は当選した。脱北避難民の子どもに生まれ、親北の金大中元大統領や盧武鉉元大統領の側近として仕えた文大統領が自らの使命と考えているアジェンダはただ1つ、南北統一である。半面、祖国分断の責任は日本の植民地支配にあり、日本は加害者と固く思い込んでいる(日本の植民地支配と南北分断の関係性は誰も立証していない)。

「親日清算」を掲げ、朴正熙、朴槿恵父娘政権の親日路線を否定するところからスタートした文政権は、日韓関係を冷え込ませる姿勢を一貫して取り続けてきた。

しかし文大統領は一切取り合わなかった

朴槿恵前政権否定の象徴的なトピックスは「和解・癒やし財団」、いわゆる慰安婦財団の解散だろう。15年の日韓合意に基づいて設立され、元慰安婦や遺族への支援事業を行ってきた同財団を、文政権は日本政府の同意を得ることなく勝手に解散してしまった。日本が拠出した10億円の残金の取り扱いも不明のままだ。

18年10月には、韓国の最高裁に当たる大法院が日本企業に韓国人元徴用工への賠償を命じる判決を確定させた。韓国の歴代政権は、徴用工問題は1965年の日韓請求権・経済協力協定で解決済みとの見解を維持してきたが、文大統領は「司法判断を尊重する」として政治介入を避けた。

「判決は国際法違反」と主張する日本政府は韓国に対して2国間協議に応じるように再三要請したり、日韓請求権協定に基づく仲裁委員会の設置を求めた。しかし文大統領は一切取り合わなかった。文政権が政治的な歯止めをかけなかった結果、徴用工問題は当該日本企業の資産差し押さえ、さらに売却によるキャッシュ化と取り返しのつかない状況になりつつある。