感情をワンプッシュで伝えられる「スタンプ」
そしてもう一つ、LINEの新規ユーザー獲得と収益の確保に、多大なる貢献を果たしたのがスマホ特有のサービス「スタンプ」です。
LINEが登場する以前、いわゆる「ガラケー(二つ折りケータイなどのフィーチャーフォン)」が主流だった時代から、絵文字や装飾を施した「デコメ(デコレーションメール)」は存在しました。ですが、ケータイの機種によってうまく表示されなかったり、ちゃんと相手に届かなかったりといったトラブルもありましたし、「小さすぎてよく見えない」との声もよく聞かれました。
そんななかで登場したLINEのスタンプは、「感情」を気軽に、ワンプッシュで伝えられるとたちまち評判に。これを「『インフォメーション(情報)』でなく『エモーション(感情・気持ち)』を伝える、画期的な発明だ」と見る識者も大勢います。
LINEスタンプの始まりは、2011年10月。サービス開始から3カ月後です。当時、私は30~40代の主婦に調査を行っていました。彼女たちから聞こえてきたのは、こんな声です。
「ママ友(ママ仲間)から、LINEの有料スタンプが送られてきたんです。私も何か、新しいの(スタンプ)を買って、送り返さないと悪いかなと思って……」
「パート先の友達が、LINEの有料スタンプをプレゼントしてくれた。それがすっごく可愛いんですよ。今お返しに、どのスタンプを贈るべきかって迷ってます」
スタンプだけで毎年約30億円以上の利益になる?
LINEのスタンプには、有料と無料の二種があります。有料スタンプは購入すれば半永久的に使用できるうえ、友達にプレゼントすることも可能。一方の無料スタンプは、おもに企業が広告効果を狙って提供しているため、数や種類が限られるほか、「期間限定」で消えてしまうものも多々あります。
よってユーザーの多くは、先の主婦のように、有料のスタンプをLINEのアプリ内で購入、自分のスマホ上に保存したり、LINE友達に送信したり、あるいは友達にプレゼントしたりもします。ある情報サイトによると、LINEの1ユーザーあたりのスタンプ購入額は、年間平均で132円だそう(2016年7月「東京カレンダーWEB」)。
一人ひとりは大した出費の実感がなくても、LINE側の売上はバカになりません。仮に国内8000万人のユーザーが、毎年132円ずつスタンプを買うとすれば、その額はなんと、年に約106億円! すべてがLINE側に残るわけではありませんが、仮にそのうち3割しか手元に残らないとしても、スタンプだけで毎年約32億円の利益を確保できます。