3 私的年金・企業年金など、個人が現役時代に行う老後への備えの支援

今回問題になった金融庁報告書にも関係しますが、公的年金についての上記1、2の改革と並行して、現役時代の貯蓄や私的年金・企業年金など、若いうちからの自助努力を支援する仕組みをつくることも重要です。厚生労働省も16年の制度改正で、専業主婦も含めすべての国民が私的年金(いわゆる3階年金)に加入できるようにしました。

私的年金などの自助努力は、公的年金の補完、足りない分の補填、とだけ考えるのではなく、より積極的に、公的年金との組み合わせでその人なりの老後生活のプランを組み立てるための選択肢、と考えたほうがいいものです。

2でも触れたように、現役時代の貯蓄や退職金、私的年金を「上乗せ」ではなく「中継ぎ」の生活資金と考えると、引退後はまずこの資金で生活することにし、公的年金の受給開始時期をその期間分だけ繰り下げて受給額を増額して長生きのリスクに備える、といった老後生活プランを考えることが可能になります。私的年金の活用次第で、あなた自身の公的年金の厚みを増すことができるようになるのです。

マクロ経済スライドは少子化・人口減少が進む中で、現役世代の給付を守るために必要なものです。そのうえで、マクロ経済スライドによる給付水準の低下を最小限にとどめ、一人一人の年金水準をいかに確保していくかがこれからの公的年金制度の課題です。

年金は貯蓄でも金融商品でもない

最後に一言。公的年金は「貯蓄」でも「金融商品」でもありません。「保険」です。何度もお話ししていますが、ぜひ皆さんに理解してほしい大事なポイントです。何を「保険」の対象にしているかというと、「長生きのリスク」です。寿命は誰にもわかりません。「長生きしても困らない」ためにあるのが公的年金です。だから世界中どこでも公的年金は必ず「終身給付」です。

「生きている限り、いつまででも保障します」が公的年金の基本機能です。途中でなくなることは決してありません。もしあなたが100歳まで生きたとしたら、100歳まで公的年金は支払われます。払い込んだ保険料の総額とは関係ありません。

公的年金は皆さんの老後生活の土台の部分を支えるものです。「100年生きても公的年金は最後まで必ずお付き合いします」という意味で言えば、公的年金は「100年安心」の給付なのです。

※本稿は個人的見解を示したものであり、外務省ともアゼルバイジャン大使館とも一切関係ありません。

(撮影=村上庄吾)
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