大学生活や教育への満足度が高いのではないか

ではなぜ地方国立大学でランクアップが目立つのか? その理由として、2019年から新たに学生調査を導入し、それをランキング指標に反映させたためでは、と著者は考えている。ランクアップした多くの大学が、学生へのこうした調査でよい数字が出た可能性がある。おそらく地方国立大学は、その大学生活や大学の教育に対する満足度などが比較的高いのではないだろうか。

もちろん地方国立大学の大学改革の成果もあるだろう。

特に文部科学省が進める「国立大学再ミッション」施策の影響は大きい。

2016年より文部科学省は全国に86ある国立大学各校にミッション(使命)の再定義を求め、特色ある大学づくりを促してきた。その施策において「地域活性化」をそのミッションとして選んだ大学の中で、地域貢献を視野に入れた新学部創設が相次いだ。こうした新学部設立が結果として、近年目立つ「大学改革」へとつながることもあったようだ。

懸命な取り組みを財務当局は評価できているか

ともあれこのランキングの成果からは、地方国立大学が、それぞれのミッションに従い、懸命に取り組み始めていることが浮かび上がってくる。特に地域貢献を前面に出した新しい学部やカリキュラムの創設などがもたらす成果は、その先にある地方、そして日本の復活へ直結するため、大変重要だと著者は考えている。

しかし大学の予算を担当する財務当局はそれらを正当に評価できているのだろうか、もしくは、昔と変わらぬ伝統的な大学観にとらわれてはいないだろうか、という懸念はやはり残る。

日本の国立大学の教育や研究や現状についてよく言われる形容句は「タテ割り」「タコツボ状態」「相互不干渉」だ。つまり、大学の研究組織が縦割りで深く掘り下げた結果、相互に不干渉となってしまった状態を指している。これは日本の官僚組織や大企業にも当てはまるだろう。特に学問の専門化が進んで高度化、細分化されたことで、大学でのこの傾向はさらに深刻になっているといわれる。

だが限られた人員や財源の中では、学内でも戦略的に重点配分する必要が出てきたのは事実であり、運営費交付金が減らされている国立大学ではなおさらである。タコツボ組織は居心地がいいのかもしれないが、今やそれが許されるほど甘い社会状況ではない。