※本稿は、木村誠『「地方国立大学」の時代 2020年に何が起こるのか』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
英語で論文を書かなければ評価される機会が減る
世界大学評価機関であるクアクアレリシモンズ(Quacquarelli Symonds)は2019年6月、世界大学ランキング2020を発表。それによると、ランクインしている日本の41大学のうち、大阪大学や東北大学、名古屋大学など、実に24校が順位を落としたことが分かった。ただ、クアクアレリシモンズのみならず、近年の世界の大学ランキング調査全般で、日本の大学は概ね苦戦を強いられていると言っていいだろう。
高度成長期などであれば、高度な研究論文であろうと、あくまで国内向けに、日本語で発表できればそれで済むことも多かった。論文を英訳する手間をかけないぶん、研究に没頭できた。
しかし、グローバル化が進んだ結果、研究論文が海外で引用される率が、研究力の国際的評価基準の一つとなった。英語になっていなければ論文の内容が一定のレベルに達していても、正当に評価される機会が大きく減少する。そのため、今では日本でも理系の論文はほとんど英語で発表されるようになっているが、こうした背景がランキングの低迷などに直結してきたと考えられる。
そのうち「THE 世界大学ランキング」は、今やマスコミらがその情報ソースとして盛んに取り上げるようになっている。各大学を評価しようにも、入試の偏差値は予備校などの出どころで違うし、もちろん学部によって大きく異なる。その点このランキングは、一定の指標に基づいてランク付けされたものだし、誰の目にも分かりやすいからだろう。
「THE 世界大学ランキング」には日本版がある
実はその「THE 世界大学ランキング」には日本版があることをご存じだろうか?
図に「THE 世界大学ランキング 日本版」の上位20位までを紹介したいと思う。なおスコアの規準は次のとおりだ。
●教育リソース――どれだけ充実した教育が行われているか。5項目で構成され、全体の34%を占める。①学生一人当たりの資金(8%)、②学生一人当たりの教員比率(8%)、③教員一人当たりの論文数(7%)、④大学合格者の学力(6%)、⑤教員一人当たりの競争的資金獲得数(5%)
●教育充実度――どれだけ教育への期待が実現されているか。5項目で構成され、全体の30%を占める。①学生調査:教員・学生の交流、協働学習の機会(6%)、②学生調査:授業・指導の充実度(6%)、③学生調査:大学の推奨度(6%)、④高校教員の評判調査:グローバル人材育成の重視(6%)、⑤高校教員の評判調査:入学後の能力伸長(6%)
●教育成果――どれだけ卒業生が活躍しているか。「教育成果」は次の2項目で構成され、全体の16%を占める。①企業人事の評判調査(8%)、②研究者の評判調査(8%)
●国際性――どれだけ国際的な教育環境になっているか。4項目で構成され、全体の20%を占める。①外国人学生比率(5%)、②外国人教員比率(5%)、③日本人学生の留学比率(5%)、④外国語で行われている講座の比率(5%)
前年度までと違うのは、教育充実度の学生調査を新たに加えた点である。