セックスしたいかどうかの意思確認をすることは、野暮と言えば野暮です。でも、これからはそういった確認が必須になると思います。そこできちんと確認して同意を得た場合ですら、人と人との関係はどうなるかわかりませんから、あとから「あの時は強要されたんだ」と言われるケースが100パーセントないとは言い切れません。その時は合意だったじゃないかと言っても、それを証明するのは難しいでしょう。

こんなことを言うと、セックスが怖くなってしまうかもしれません。だったら家でオナニーしたほうがマシと思うかもしれません。それでも僕はセックスがしたいし、女性と心も体も触れ合いたいと思っています。そのためには、最大限の配慮をしたいと思っています。

「あなたとの初めてのセックスを特別なものにしたい」

と、性的同意の前置きが長くなりましたが、ここでシルクラボの女性向けAVでは、どのように女性を誘っているのかを紹介します。

男性向けAVと一番違うのは、セックスに至るまでに「あなたを愛しているからセックスしたいのだ」という意思表明をしているところだと思います。単純に欲望を解消する手段としてではなく、あなたとセックスしたいから、という動機を大事にしています。過去、シルクラボの作品に『四畳半ダーリン』という貧乏な童貞男子とセックスをする作品がありました。

この作品の登場人物は、彼女との初めてのセックスを、ちゃんとしたホテルでしたいと考えます。そのため、貧乏な彼は、彼女と会う時間も減らしてバイトに明け暮れます。

一方で彼女は、最近あまり会ってくれない彼に嫌われたのかもしれないと思って、一度はケンカするのですが、彼は「ちゃんとした場所で初エッチをしたいから、お金をためていたんだ」と初めて告白します。それを聞いた彼女は感激して、その気持ちだけで嬉しいと四畳半のせんべい布団の上でセックスをするというストーリーです。

そのセックスは、初めてなので拙(つたな)く下手なものなのですが、それがまたいいと、女性に好評でした。お金がなくてもセックスが下手でも、「あなたとの初めてのセックスを特別なものにしたかった」というストーリーに女性たちはきゅんときたのです。

もちろん女性向けのAVだって、ファンタジーです。ドラマじゃあるまいし、いちいち想いを伝えてセックスするなんて面倒だと思うかもしれません。でも、こういった作品が女性に支持されていることは、知っておいて損はないと思います。

「誘い方」の最も大事なポイントとは

一方で、単純に性欲を解消したいから「セックスさせて」というパターンもあります。その場合は先にはっきりとそれを表明し、相手の女優さんにも同意してもらった上でセックスする流れになります。スポーツのようにセックスを楽しもうよというシチュエーションです。

一徹『セックスのほんとう』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

さらに言えば、シルクラボの女性向けAVにも強引にセックスするシチュエーションはあります。ただ、レイプのように嫌な相手に無理やり犯されるというものではありません。「女性自身が好意をもっている男性から強引に迫られる」という演出が必ず加わります。

いかがでしょうか。性的同意や、女性の気持ちを考えると、セックスってなんて面倒なんだと思ってしまうかもしれません。

でも、難しく考えなければ、要は「君とセックスしたい(なぜなら好きだから)」とちゃんと伝えて、「いいよ」と言われればいいわけです。ダメと言われたらすぐに引き下がり、いいと言われたら楽しめばいい。

実はそれが「誘い方」の最も大事なポイントだと思います。

一徹
AV男優
1979年生まれ。大学卒業後、公認会計士試験の勉強中に見つけたエキストラ男優募集をきっかけにAV業界へ。2009年「an an」SEX特集号のDVD(SILK LABO監修)に出演。これをきっかけに一般女性にブレークし、人気男優へ。2018年、自身のAV監督レーベルAV「RINGTREE」を立ち上げる。著書に『恋に効く SEXセラピー』(KADOKAWA)。
(写真=iStock.com)
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