重要文化財の「渡り廊下」が神社と寺院を一体化させる

しかし、竹生島が稀有なのは、いまだに神社と寺院が一体化した施設が残されている点である。それは、宝厳寺と都久夫須麻神社とをつなぐ渡り廊下(舟廊下、重要文化財)である。この舟廊下は豊臣秀吉の御座船、日本丸を移築したもの。重要文化財に指定されている。

都久夫須麻神社と宝厳寺を繋ぐ舟廊下(撮影=鵜飼秀徳)

舟廊下は、当時の権力者に抗い、信仰を守った証しである。いまでも、参拝客はこの舟廊下を通って、宝厳寺と都久夫須麻神社を行き来する。

明治初期の神仏分離令以降、わが国では基本的には仏教と神道が混じり合うことはなくなった。しかし、竹生島では、かつての混交宗教の形態がわずかにも残されているのだ。

別々の宗教が、仲良く併存してきた国家は珍しい。日本の宗教風土は、おおらかな日本人の民族性を表している。竹生島で神と仏が別々の道を歩むようになって、今年で150年の節目を迎える。今一度、日本人の心の原点を見つめてみたいものである。

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