米側が設けた高いハードルを下げさせる狙い

「この1年あまり、北朝鮮が見せてきた変化への期待が、一気にしぼみかねない。使い古された軍事的挑発を繰り返すなら、再び孤立に戻るだけだ」

こう書き出すのは、5月11日付の朝日新聞の社説である。

朝日社説は「弾道ミサイル発射はこの1年半なかった。今回の動きには、2月の米朝首脳会談で制裁の緩和が認められなかったことへの不満が絡んでいるようだ」と指摘した後、金正恩氏の狙いについてこう解説する。

「米国を直接刺激しない規模にとどめつつ、軍事的な示威行動をとる。それにより、核放棄と制裁の完全解除の一括合意という、米側が設けた高いハードルを下げさせる狙いだろう」

北朝鮮の経済再建については「周辺国との対話が進んだとはいえ、身勝手な考えは相変わらずらしい。交渉の歯車を回すために挑発に走るようでは、制裁緩和の道はますます遠のき、念願の経済再建は実現しない」と言い切る。

金正恩氏はこの朝日社説の忠告にしっかり耳を傾けるべきだ。

金正恩氏の最終目標は、北朝鮮が国家として栄えて国民一人ひとりの暮らしが豊かになることだ、と沙鴎一歩は考えている。金正恩氏が大きく間違っているのは、その豊かさを核兵器という最悪の武力を使って実現しようとしているところにある。

朝日社説すら批判する文政権の異常さ

金正恩氏は、幼少の頃からスイスに留学して国家を治めるための最高レベルの教育を受けてきたはずだ。その教育の成果を国際社会に示してほしい。いまのままでは鼎の軽重を問われかねない。国のトップとしての自らの器の大きさを国際社会にアピールすべきときである。

朝日社説は米朝会談に言及し、「前例のない米朝首脳間の蜜月は、北朝鮮が孤立を抜け出す千載一遇の機会をもたらした。しかし、北朝鮮は自ら冷や水をかける愚を犯そうとしている」と指摘した。

さらに日米韓政府の対応を「首をかしげる点がある。4日の発射以来、ことさら事態を重くとらえないような言動が目立った」と批判する。

特に韓国に対しては「韓国では早くから、南北首脳による昨年の軍事分野合意に反するとの指摘があった。それでも文在寅(ムンジェイン)政権は、合意の『趣旨にそぐわない』との表現で、あいまいな評価にとどめている」と朝日社説は追及する。

これまで朝日社説は隣国の韓国に対し、優しい姿勢をとってきたはず。その朝日社説が批判するのだから、文政権の異常さは際立つ。