国連安保理は「弾道技術を使ったあらゆる発射」を禁じている

次に5月11日付の産経新聞の社説(主張)を取り上げる。見出しは「北のミサイル 軍事挑発に決然と対処を」、書き出しは「日米両政府は、北朝鮮が9日に発射した飛翔体は短距離弾道ミサイルだったと断定した」だ。

続いて産経社説は「国連安全保障理事会決議は北朝鮮に対し、射程の長短にかかわらず『弾道技術を使ったあらゆる発射』を禁じており、重大な決議違反である」と指摘し、こう主張する。

「速やかに安保理を招集する必要がある。国際社会として非難の意思を明確に示し、制裁強化を検討すべきだ」

「安保理の招集」「制裁強化」と実に分かりやすい。産経社説らしさが出ている。もちろん毅然とした態度は重要である。だが、無法者の域に入った金正恩氏を、「目に目を、歯には歯を」で押さえ込むことができるだろうか。

「瀬戸際外交」のペースに巻き込まれてはいけない

やられたらさらにやり返す。攻撃してきたらさらに攻撃する。挑発に怒り、挑発に乗る。そんな対応では、取り返しの付かない事態となる。負の連鎖が断ち切れず、人類は失敗を何度も繰り返してきた。

北朝鮮が核を搭載した弾道ミサイルを発射するような事態は何としても避けたい。

産経社説はこうも指摘する。

「北朝鮮は4日にも複数の飛翔体を発射した。米朝交渉再開をにらみ軍事挑発をエスカレートさせる可能性がある。留意すべきは、緊張を一方的に高め、譲歩を引き出す『瀬戸際外交』が、北朝鮮の常套手段であり、そのペースに巻き込まれると非核化での過去の失敗を繰り返すということだ」

「北朝鮮のペースに巻き込まれるな」との産経社説の主張には賛成だ。金正恩氏は、今後も挑発のミサイルを打ち上げて日米韓を巻き込んで、有利な条件で制裁緩和を求めようと狙っている。中国の習近平(シー・チンピン)国家主席やロシアのプーチン大統領を手玉に取って後ろ盾に変えてしまった“つわもの”である。決してそのペースに圧倒されてはならない。