理想的なのは「帰納法」だが……

報告書や提案書をまとめる場合、どちらがよいかといえば、帰納法に決まっています。現地や現場を調べた結果をまとめるからです。ジャーナリズムでいえば、下調べを十分に行なった上で、さらに取材を繰り返して掘り下げ、結論を導き出す。こうした積み重ねがスクープや充実した記事に結びつきます。

だから、帰納法が理想です。学者が現地調査(フィールドワーク)をするといった場合も、帰納法です。

しかし、多くのビジネスパーソンには、そこまでの時間はないのが現状です。現実問題として、帰納法だけで取り組むと、膨大な取材が必要で、とてつもない時間がかかりますから、少なくとも帰納法だけで報告書をまとめるのは非現実的といえます。

そこで、お勧めしたいのが「緩やかな演繹法」です。

「仮説」を立ててのぞむ重要性

「緩やかな演繹法」とは、演繹法と銘打っているのですから、基本的には演繹法です。ただ、状況によっては、帰納法を取り入れるのです。その意味で「緩やかな」と断わっています。

演繹法では、先にも書いたように、個別具体的な結論を得るように試みます。

そのためには、まずは下調べ。そこで仮説を立てます。「きっと○△ではないか」と。さらに「▽□というストーリーがあるのではないか」と。

その上で現地に行ってみて、その通りであれば、仮説が立証されたことになります。仮説の通りだったわけですから、報告書や提案書はまとめやすいはずです。

ところが、実際に現地に行ってみると、下調べをして、仮説を立てていたこととは違った部分も見えてくるものです。いやむしろ、何かしらの発見をするために現地に行くわけですから、何も気がつかないようでは、行く意味がありません。

ですから、演繹法といっても、仮説にがんじがらめになってはいけません。ジャーナリズムの世界でいえば、「初めに結論ありき」ではいけないのです。取材前に立てた仮説を前提に取材を進めていると、実際には、その仮説とは違った現実があることに気づくはずです。