ラジオニュースを録音して書き起こした

さらに、NHKラジオの全国放送のニュースを録音し、それを書き起こしました。松江放送局にある原稿は島根県のニュースばかり。全国レベルのニュース原稿を、こうして人手し、自分なりに研究したのです。

池上彰『伝える力』(PHPビジネス新書)

この方法は何も私の専売特許ではありません。作家をめざす人も、自分が好きな作家の文章を丸写しして、文章力を磨く練習をすることがよくあるようです。浅田次郎さんも「文章修業のため、川端康成や谷崎潤一郎らの文章を書き写した」と発言しています。

先輩や上司が書いた文書を書き写す作業は時間がかかりますが、読み込んだ中から「これは」と思うものを選び出して書き写してみると、学べることは多いはずです。

その際には、私の実感としては、キーボードで打ち込んでいくよりは、鉛筆やペンを使って手で書き写していくほうが、より勉強になるような気がします。

報告書を意識して現地で「素材」を探す

ニュース原稿を書く場合は「5W1H」、すなわち「When=いつ」「Where=どこで」「Who=誰が」「What=何を」「Why=なぜ」「How=どのように」したのかを押さえることが基本であるといわれます。私たちが取材をする際は、この「5W1H」を常に意識しています。

私は、ジャーナリストの「5W1H」に相当するものが、報告書などにおける「フォーマット」であると理解しています。

ある報告をするために現地にリサーチに行くとします。この場合、漫然と現地に赴くようでは、ビジネスパーソンとして失格です。事前に報告書のフォーマットを確認し、頭に叩き込んで、それを常に意識しながら現地調査をすることが大切です。

もちろん最低限の下調べをしていくことは必須条件。フォーマットが決まっているということは、料理にたとえれば、料理の手順が決まっているということです。その手順に当てはめるための「素材」を探すのが現地調査。

だから報告書をまとめる際には、素材を手順に当てはめていけば、基本的には十分な報告書が出来上がるはずです。