「安全だ」と思える心理状態が組織運営には不可欠

「心理的安全性」とは、簡単に言えば「ここは自分にとって安全だ」と思える心理状態のことです。安心して発言できる、安心して行動できるということで、実はコミュニティや組織を運営していくうえで欠かせないものです。

いまでこそ僕は地域コミュニティにどっぷり入ってまちづくりをする手法を実践したり人に教えたりという仕事をしていますが、もともとはひどい人見知りで、コミュニケーション・コンプレックスのかたまりでした。

そもそも、友達のつくり方がわからない。新歓コンパへ行って、隣の人に声かけるなんてお手上げです。名前が覚えられないので自信がなくて自分から話しかけられないし、ニックネームや下の名前で呼ぶ感覚もつかめず、仲良くなっても「くん」付け「さん」付けで呼んでいました。そんな自分の経験がベースにあるから、「心理的安全性」について人一倍深く考えるようになったのだと思います。

喜びや悲しみを組織全体で共有していく

では、人間関係の中で「心理的安全性」はどのようにして得られるのか。それは、長年かけて編み出したオリジナル理論、「関係性深化のフロー」で説明ができます。

誰しも人生でいままで接触したことがない人と出会うのは、脅威です。そういうときにまず、「共通項」(出身地や出身校、趣味など)が話のベースにあると人は「安心感」を覚えます。さらに、「共通体験」(一緒に経験する、何かを達成させる)を経て「好奇心」が生まれます。そして、「違い」(立場や境遇など)を知ることでそれまでの怯えや脅威が「リスペクト」に変わっていきます。それを経て、「ありのまま」(夢、悩み、弱みの開示)の共有という流れで関係性を深めていけます。まとめると、こういうことになります。

①「共通項」→ ②「共通体験」→ ③「違い」→ ④「ありのまま」

①から②、②から③と関係性を深めながら、「心理的安全性」が高まっていきます。そして、④「ありのまま」を共有できたとき、人は心からの安心感を得られ、そこが自分の居場所だと感じられます。自分を取り巻く人間関係、属している集団、地域、組織といったものにポジティブに向き合っていくことができ、互いの個性を認めつつ、つながっていけます。ですから、誰かの悲しみは私の悲しみで、その人の喜びは私の喜びになるという、「自他非分離」の状態になるのです。