「ありのまま」で対話ができる環境をいかにつくるか

僕がカヤックの柳澤さんに注目する一番のポイントは、社内文化として定着させてきたブレストを地域活動へ転用したことです。同社の発祥の地である鎌倉で立ち上げられた地域団体「カマコン」で、柳澤さんはいまブレストを「組織づくり」の手法から「まちづくり」の手法へと広げ、「鎌倉資本主義」を押し進めています。

「鎌倉資本主義」とは、東京一極集中だけではなく、地域での働き方や暮らし方を多様化していくことで、従来の資本主義が抱えている課題の解決につながるのではないか――。そうした仮説のもと、企業と地域のゆるやかで新しい関係を築いていこうという活動で、その基盤となっているのが鎌倉に拠点を置くベンチャー企業の経営者が立ち上げた地域団体「カマコン」だ。月一度の定例会では、有志たちが地域を活性化させるプロジェクトをプレゼンし、150人ほどの参加者が、自分の関心あるプロジェクトを選びブレストを行っている。ここから、市長選の投票率を上げる、空き家を活用する、地域で働く人が誰でも使える社員食堂をつくる、といった地域の問題を解決する数々の取り組みが生まれた。

どこの地域でもその地域なりの問題を抱えています。そこで暮らす人々には不満や要望が必ずあります。でも一般の市民は、それらのことを自分たちで解決できるとはあまり思わないでしょう。自治体に任せておくしかない、地域のしきたりもある、とあきらめているのが普通でしょう。多くの地域では、普通仕事やプライベートの関係はありませんから、対話する機会はあまりありません。また、まちの未来を考える場面でもどうしても「行政」「民間」「市民」といった枠組みで考えがちで、それが対立やしがらみにつながっていきます。

そんな中で対話の集まりを持っても、一人ひとりが安心して発言することはできず、表面的なやりとりで終わってしまいます。いかに地域において一人ひとりが「ありのまま」を出して、対話をしていく環境がつくれるかが重要になってくるのです。それは地域だけでなく組織でも同様です。