【小松】いずれIPOで資金調達をして、工場などの設備投資をしたいと思っています。ファブレスでやる選択もありますが、自前の工場のほうがノウハウを守れるし、雇用をつくれます。

【田原】資金といえば、サッカーの本田圭佑さんがA.L.I.に出資しているそうですね。どういう経緯ですか?

【小松】18年の春に、共通の友人を通して出会いました。彼はカンボジアなどの発展途上国で、ドローンを活用した物流をやりたいという志を持っている。僕もグローバルで事業を進めたいという思いがあって、彼の活動に共感していました。それで出資してもらうことになりました。

【田原】小松さんはいまブロックチェーンの研究もしているそうですね。空飛ぶバイクに関係ある?

【小松】空飛ぶバイクの次にやりたいのは、本当に高い空を飛ぶクルマです。ただ、現状で空に道路はありません。では、みんなどうやって飛ぶのか。僕の勝手な想像ですが、将来は空飛ぶクルマのフロントガラスに仮想の道路が映し出されて、それに沿って走るようになると思っています。仮想の道路は、誰かが管理して管制塔の役割を果たす必要がある。そこにブロックチェーン技術が使えるのではないかと。

【田原】車体と同時に、交通システムの研究開発をしているわけですか。

【小松】はい。じつは18年、僕たちはドローン国際レースの日本における運営に参画しました。ドローンレースに参画するのは、空のレギュレーションに関わるためです。先進国の信号の色がみんな同じなのは、F1レースのレギュレーションが各国にも波及しているから。おそらく空の道路でも同じことが起きる。ドローンレースのレギュレーションづくりをすることで、空飛ぶクルマのレギュレーションにもタッチできると期待しています。

【田原】空飛ぶクルマにしてもブロックチェーンで管理する仮想道路にしても、僕にはSFの世界みたいに聞こえる。それをリアルな世界でやろうと考えるところがすごいね。

【小松】昔、携帯電話のボタンがなくなると想像していた人は誰もいなかったと思います。でも、スティーブ・ジョブズがなくして、いまやあたりまえになった。結局、本気で信じて取り組むかどうか。僕はそれを空の世界でやろうとしているだけです。

【田原】小松さんはもともと宇宙船をつくりたいと言った。空飛ぶクルマの先には宇宙船がある?

【小松】はい。大きな宇宙船はイーロン・マスクが先にやってくれそうですが、惑星のまわりを気軽に飛べるような小型のモビリティにはいつか挑戦してみたいですね。

【田原】そうですか。夢が広がりますね。頑張ってください。

田原さんから小松さんへのメッセージ

小松さんの武器は、想像力と実行力ですね。空飛ぶクルマは完全にSFの世界。ブロックチェーンで仮想道路の管理をするという発想も、普通の人はまず思い浮かびません。そして、実現するために、ロードマップを描いて具体的な行動に落とし込んでいる。夢を実現するための第一歩がドローンなら、空飛ぶバイクは二歩目になるのでしょう。

僕は免許の更新をしなかったのでいまは免許がないけれど、昔はバイクにも乗っていました。さっき試作機にまたがったら血が騒いでしまいました(笑)。発売されたら、ぜひ乗りたいですね。

田原総一朗の遺言:SFの世界を現実にしろ!

(構成=村上 敬 撮影=宇佐美雅浩)
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