設計データを自動解析し、最適な町工場とマッチングする――。その時間は7秒だという。創業したのは元マッキンゼーでコスト削減提案をしていた経営者とアップル本社のエンジニアだった青年のコンビだ。
ジャーナリストの田原総一朗氏とキャディ社長 加藤勇志郎氏

マッキンゼーでは、できなかったサービス

【田原】加藤さんは東京大学のご出身。学生時代は何をやっていましたか?

【加藤】実は、大学はほとんど行ってなかったです。部活でアイスホッケーを一生懸命やって、あとは自分で事業をやっていました。

【田原】事業って、具体的には?

【加藤】いくつかやっていて、1つは医療系でした。日本はアメリカに比べて薬の開発に要する期間が長いのですが、その原因の1つが治験です。薬の有効性や安全性を確かめるために医療機関が治験者を集めて治験するのですが、治験者は学生のバイト感覚だから、すぐ辞めてしまう。たとえば30人集めてスタートしても、最後に残るのは10人くらい。それで困っている医療機関向けにコンサルティングをしていました。

【田原】卒業後はマッキンゼーにお入りになる。起業していたなら、就職しなくてもよかったんじゃない?

【加藤】事業をやりたいという思いは強かったので悩みました。ただ、世の中にどんな社会課題があるのかを知るには、いったん会社に入ってみるのもいいのかなと。マッキンゼーを選んだのも、いろいろな産業の課題に触れることができると思ったからです。もう1つ、それまで私はグローバルの経験がほとんどなかったので、海外での経験が積めるところで働きたいという考えもありました。

【田原】勤めたのは東京?

【加藤】拠点は東京でしたが、アメリカや中国、オランダでも仕事をしていました。

【田原】どんな仕事をしていたの?

【加藤】製造業の調達部門の支援です。たとえば電車の車両メーカーがあるとします。電車の部品は約3万点あって、基本的には内製ではなく外部から買ってくる。調達コストは売り上げの約6~7割を占めるほど大きいので、調達を効率化して、コストをいかに下げるのかというコンサルティングをしていました。

【田原】メーカーの調達って、そんなに非効率でムダが多いんですか?

【加藤】部品の点数に比べて購買担当の人数が少ないのです。たとえば電車なら、山手線と山陽本線の車両はまったく違って、部品はほとんどカスタマイズ品。1つのメーカーが調達する部品は、3万点×50車両で、年間に150万点にのぼります。それに対して購買担当者は10~20人で、1人あたり年間10万点、毎日400点の部品を買わなきゃいけない。そうすると一点ずつ、精査して発注することなんてできません。

【田原】毎日400点なんて、むちゃくちゃじゃないですか!