自民党の石破茂元幹事長の存在感がかすむ一方だ。昨年9月の自民党総裁選で45%もの地方票を獲得し、「安倍1強」後の首相候補1番手の位置を確保したはずだった。ところが総裁選から約5カ月がたち、今や安倍氏の言動をひたすら批判する党内の抵抗勢力のような位置づけになってしまった。いったいどこで歯車が狂ってしまったのか――。
総裁選挙を終え、記者団の質問に答える自民党の石破茂元幹事長=9月20日、東京・永田町の同党本部(写真=時事通信フォト)

発言は完全に「野党化」している

2月10日、都内のホテルで行われた自民党大会の後、石破氏は記者団に囲まれ、とうとうと語り続けた。

「国民が求めているのは民主党に対する批判ではない。きょうの大会の話を聞いていても、嵐のような拍手が起こる場面がなかった。実感と乖離を起こしている」

「自衛隊の募集に協力しない自治体があるから憲法を変えるのだという、そういう論法だった。『憲法違反なので自衛隊の募集に協力しません』という自治体を、私は寡聞にして知らない」

どちらも安倍氏のあいさつに対する発言だ。1つ目は、安倍氏の「悪夢のような民主党政権」という表現を批判したもの。2つ目は「自衛隊の新規隊員募集に都道府県の6割以上が協力を拒否している」という部分にかみついたものだ。どちらも、理屈は通った批判なのだが、残念ながら「何でも反対の野党」が言っていることとなんら変わらないのも事実だ。

党大会の時だけではない。最近は安倍氏がどこかで発言する度にコメントを求められる。15日には、安倍氏の「自治体の6割以上が協力拒否」発言を受けて、自民党本部が党所属国会議員たちに、選挙区内の自治体に対し協力を要請するよう求める文書を配布したことについて「恐ろしい論理の飛躍だ」と厳しく論評した。

石破氏は予算委員会のメンバーだ。閣僚や官僚が答弁している時、テレビカメラの奥で仏頂面をしている石破氏の顔が映り込むことが少なくない。休憩時間に記者団を前に、野党の質問能力の拙さを嘆き「私ならこう攻めるのだが……」というようなことを語ることもあるという。