最側近だった古川氏は「事務総長」を辞任

派内の足並みの乱れも少なからずある。ことし1月、石破氏の最側近である古川禎久衆院議員が石破派事務総長を辞任した。「総裁選が終わり一区切りついた」というのが表向きの理由だ。

しかし、本当は石破氏と古川氏の間ですきま風が吹いてきたとの観測も広がる。総裁選で石破氏のために走り回ったのに、その後の内閣改造では自分よりもはるか後輩の山下貴司氏が法相に起用された。古川氏としてはおもしろいはずはない。安倍氏が山下氏を抜てきしたのは石破派内の結束を乱す狙いもあったと言われる。その狙い通りだったようだ。

「与党内野党」といえば聞こえはいいが、ポストには恵まれない。派内の結束を維持するのは簡単なことではない。安倍氏は人事のたびに石破派の揺さぶりを図ることだろう。

過激な発言を求め、群がるマスコミ

石破氏が「与党内野党」のキャラクターを強めているのは、マスコミ側の事情もある。「安倍1強」が続く今、新聞、テレビなどのメディアはバランスをとるために政権に批判的な意見を求める。当然野党は厳しいコメントを出すが「1強」の中では野党のコメントでは弱い。そこで、自民党内で批判的な意見を求める。

つい先日までは村上誠一郎元規制改革担当相がその役割を果たしてきた。しかし村上氏は党内にあって1匹オオカミで、人望もないためインパクトに欠ける。

その点、石破氏は小なりといえども派閥のリーダーで総裁選を安倍氏と争った。石破氏が村上氏並みに政権批判のメーターを上げれば当然、テレビカメラは石破氏に群がる。だから石破氏は毎日のようにテレビカメラの前で安倍政権を批判し、安倍氏側はどんどん石破氏を遠ざけることになる。

石破氏の安倍政権批判は、マスコミでは重宝がられるが、自民党内では「利敵行為」と映る。政権が早晩倒れる確証があればそれでもいいが、長期政権が見込まれる場合は正しい戦略とはいえない。

より激しい政権批判をして倒閣に走るか。それともいったん批判のボルテージを下げて中長期的な作戦に切り替えるのか。石破氏にとって、戦略見直しが求められる時なのかもしれない。

(写真=時事通信フォト)
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