「セブンカフェ」のこだわり方

――コンビニコーヒーの急拡大は、2013年にセブン‐イレブン(セブン)が仕掛けた「セブンカフェ」からですね。

はい。初年度で4億5000万杯も出て社会現象となりました。2018年は10億杯に伸び、セブンに追随して競合もコーヒーを強化した結果、コンビニコーヒーの市場規模は、2012年は200億円だったのが、2017年には2300億円台と約10倍に伸びています。喫茶店市場が1兆円規模ですから、たった5年でその2割の規模に拡大しました。

セブンは、十数年前から抽出コーヒーシステムの開発に取り組み、トライ&エラーを重ねました。新システムを開発するたびに、私も取材しました。たとえば「バリスターズカフェ」というエスプレッソタイプのコーヒーも出しましたが、最終的にはドリップ式に変えて大成功を収めたのです。

原料豆は系列の大手商社・三井物産から調達し、焙煎は味の素ゼネラルフーヅ(現・味の素AGF)、専用マシンは自動販売機製造最大手の子会社(旧富士電機冷機)を傘下に持つ富士電機と共同で開発した。セブンカフェの導入店舗には、マシンを貸与ではなく買い取りを条件とした。自前とすることで、店舗オーナーはメンテナンスに注意を払うため故障も少なくなる一面もありました。

煎り・挽き・淹れの「3たて」にこだわった

――コーヒー豆はどんなものを使っていますか。

コーヒー豆の品種は、生産量全体の約6割を占める「アラビカ種」と、約4割の「ロブスタ種」に分れます。アラビカ種は、全般的に香りや酸味やコクに優れています。ロブスタ種は苦味が強くて独特の香りですが、カフェインの含有率はアラビカ種の2倍あります。セブンのブレンドコーヒーはアラビカ種100%ですが、高級豆ではなくスタンダードクラス(1キロ当たり400~500円)ではないでしょうか。

――高い豆を使っていないのに「おいしい」という人が多いのは、なぜですか。

コーヒーのおいしさの基本である、煎りたて・挽きたて・淹れたてにこだわったからです。専用マシンがそれを可能にしました。焙煎豆については販売量の多さから回転が早いため、常に高い鮮度が維持できます。一般的に外食チェーンでは、ドリップコーヒーは抽出後30分経過したら廃棄します。コーヒーは抽出時点から、酸化・劣化が進むからですが、抽出仕立てのコーヒーを提供されるか、廃棄寸前のものを提供されるかは、お客さんには選択できません。