幹事長の二階氏、幹事長代行の萩生田氏の争い
両派の争いについて、党内は総じて岸田派に同情的だ。今、自民党は衆院でも参院でも十分な議席を持っている。党内に波風を立てるような手をつかって1人の国会議員を引っ張り込む必要はない。
萩生田氏の「説明なしにウロウロされるのは迷惑だ」という激烈な表現も、そういった党内の雰囲気が背景にある。これに二階氏は「ウロウロとは何事だ」と怒りをぶちまけているという。幹事長の二階氏、幹事長代行の萩生田氏。上司と部下の争いも今後、目が離せない。
そういう軋轢があるのを意識しているのだろう。細野氏は、自身が二階派にわらじを脱いだ「根拠」を昭和期の1人の政治家に頼ろうとしている。
自民党入りを「理解できない」と答えた人は58%
「二階派とのご縁は、二階会長というのがあります。遠藤三郎先生の秘書を二階会長はやられていた」
遠藤三郎とは、現在の静岡5区(三島市など)を地盤にした昭和期の政治家で、建設相などを歴任し1971年に死去した。二階氏は大学卒業後、政界入りした際、まず遠藤氏の秘書になっている。つまり、二階氏と細野氏という似ても似つかぬ2人の政治家は、遠藤三郎という人物を接点に1本の糸でつながっている。
細野氏はその「縁」を強調することで二階派入りの正当性を示そうとしているのだ。二階氏も周囲に「静岡5区は遠藤先生以来、見るべき政治家がいたか」と呼応してみせる。しかし、遠藤氏がいかに静岡県東部の生んだ偉大な政治家だったとしても、50年近く前に他界した人物の名を持ち出すのは苦しい。これは「後付け」の理屈だろう。裏返せば、今回の二階派入りの評判が悪いことを二階氏も細野氏も自覚しているということなのだろう。
2月2、3の両日にJNNが行った世論調査では、細野氏が自民党に入ることに「理解できる」は25%で、「理解できない」と答えた人は58%だった。自民党の静岡5区支部は、細野氏の入党を認めないよう党本部に要請する方針だ。ある程度予想したこととはいえ、細野氏にとっては厳しい船出となった。