「皆さん、築古物件を過小評価しています」

「あるきっかけで買った中古マンションをリフォームし、賃貸に出したのですが、まったく借り手がつかない。そこで、塗装のスキルを生かして、今までにないカラーリングの住戸にしたら、すぐに借り手がついたんです」(大熊氏、以下同)

写真=iStock.com/miura-makoto

同じ手法を戸建てで試みたら、これが「バッチリ当たった」。それから、築古物件のリフォーム・賃貸化の依頼を受けるようになった。相続した実家の処分についての相談も増えたという。これまで福岡県北九州市や石川県、山梨県などの物件を手がけ、「8割は何とかなる」と大熊氏は自信を見せる。

「だいたい皆さん、築古物件を過小評価しています」と大熊氏はいう。

「特に相続して放置しておいた家だと『こんなボロ家を借りる人、ほんまにおるんか』と言います。でも、私たちの目で見ると、これはいいものになるなという物件が実に多い」

なまじ思い出の詰まった土地建物だけに、ボウボウの雑草や雨漏りという惨状を見るだけで気持ちが萎えてしまうのも無理はない。が、見かけによらず、修復が十分可能な案件は少なくないのだ。

「“ゴミ屋敷”もきれいにすれば何の問題もないし、シロアリは多くの場合、食われているのは家屋の一部だけ。傾いていても、床だけ修理すればよいケースもあります。見た目であきらめないことです」

大熊氏は、自身で培ってきた古家再生のノウハウをマニュアル化。人に指導できる仕組みづくりを徐々に整え、協議会の設立に至った。

同協議会では、築古物件の戸建て賃貸化をコーディネートする古家再生士の認定を行っており、依頼に対しては入居者付け、賃貸契約まで面倒をみてくれる。投資家向けには、古家再生投資プランナーというアドバイザーの認定制度もある。

「大手の不動産会社や工務店へ行くと『建て替えましょう』といわれる。相続した実家に何千万円もかけられる人なんて、そうはいませんよ。リフォーム会社に相談したら、500万~600万円もかかり、貸し出そうとしたら、家賃がその地域の相場より大幅に高くなって、結局は借り手がつかなかった。そんな話もよく聞きました」

実は、築古物件を戸建て貸家に再生する場合、ここが成否の重要なポイントになる。工務店が示したリフォームにかかる費用をもとに家賃を算定するという発想では、失敗する可能性が高いのだ。

では、どうするのか。大熊氏はまず「利回りをつくる」ところから始めるという。賃貸利回りを設定し、次にその地域の家賃相場を調べて、その利回り達成に必要な投資額=古家の再生費用を決めるわけだ。スタンスはマイナス資産の処分ではなく、どれくらい儲かるかを模索する投資家である。