※本稿は、「プレジデント」(2018年12月3日号)の掲載記事を再編集したものです。
マイナス資産を、プラスにする法
ずっと独り暮らしだった親が他界し、故郷の実家の土地・建物を相続した。だが、自身はその実家から長いこと遠く離れて暮らしているうえ、築年が古く、家の中の家財道具もそのまま残っている。
売ろうにも売れず、あんなボロ家に借り手がつくとも思えず、途方にくれたまま時間だけが過ぎてゆく。何かよい手立てはないものだろうか。
「最近、そういう相談が増えています」――不動産業のエージェントサービス(埼玉県さいたま市)代表・石井成光氏が言う。
「そういう相談で、皆さんがまず口にするのは『いくらで売れるか』ですが、業者サイドとしては、あまり扱いたくない案件ですね……」
理由は、多くの場合商売にならないから。石井氏は「それも立地によりけりなのですが」と前置きして、「例えば、首都圏エリアで都心から30~40キロ圏内の市街地ならば、業者は歓迎でしょう。しかし、その圏外となると、買い手がなかなかつかぬうえ、土地・建物の評価額がガクンと低くなり、手数料収入では見合わなくなります」。
地方都市の場合もほぼ同様。通勤圏を外れると、売るのは相当に難しくなる。問題は立地ばかりではない。実家を売りたいという相談の対象家屋には築30年、40年以上という築古物件が多いのだ。
長く空き家であったがゆえに傷んだり、傾いたりと、そのまま住むのに適さない物件も少なくない。では、いっそ家屋を取り壊して、更地にして土地を売ってはどうか。
「やはり見合わないでしょう。家財の処分費用や家屋の解体費用がかかります。地方都市の郊外では、土地価格が坪約5万~6万円のところが多いのですが、解体費用は概ね坪5万円ほどが目安。業者に頼んで家財を廃棄物として処分するにも、数十万円はかかります」(石井氏、以下同)
石井氏は、依頼があれば家の売買、または解体と土地売買の見積もりはする。しかし、たいていの場合、見積もりを見た依頼者からは音沙汰なしになるそうだ。