実際、どれくらいの利回りが期待できるのか。同協議会の再生プランでは、古家であるがゆえのその家の良さや、地域性に合わせ、他の戸建て賃貸との差別化も図っているという。それもあって、賃貸利回りは関西で14~15%、関東で12~13%が標準ライン。相続した家は、買い入れ費用がないので、利回り30%~40%が標準だという。相談を受けて再生を勧めるかどうかの判断ラインも、この利回りを指標としている。

「今は取引のほとんどがネット経由なので、需要のボリュームゾーンを外した家賃設定は、借り主の検索に引っかからなくなります。十中八九、うまくいきません」

固定資産税が、3~6倍になる

大熊氏が実際に相談を受けた大阪・四條畷市の物件を見てみよう。東京在住の40代・共働き夫婦が、認知症となった妻の父親の死後、ゴミ屋敷化した実家を相続。「そのまま売却したら、坪20万円くらいで900万円、解体費用は業者の言い値です。200万円取られれば、残るのは700万円程度」

将来の自らの居住を考えて、費用を通常より100万円程度上積みしたため、利回りは20%台となったが、それでも4年半で取り戻せる計算だ。

石井・大熊両氏は「相続した実家は放置せず、なるべく早く再利用を考えたほうがいい」と言う。15年に施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法」がその根拠である。石井氏は「下手をすると、固定資産税が3~6倍になることもありうる。倒壊の恐れなどから、自治体に『特定空家等』に指定されると、改修や取り壊しなどの指導を受けます。従わないと税の優遇措置が取り消され、固定資産税が跳ね上がります」と言う。

全国の空き家数は、13年段階でおよそ820万戸(総務省統計局「住宅・土地統計調査結果」)。今後も増え続けると見込まれている。

「空き家の賃貸再利用は、持ち主も借り主も、地域の人もハッピーになる話」とは大熊氏。「100万円や200万円のリフォーム費用はかかるけれど『実家をどうしようか』と手をこまねいているより、これを投資だと考え、大家になって利益を得る道を選ぶほうが得策ですよ」

確かにこれは、大いに検討する余地がある。

石井成光
エージェントサービス社長
不動産営業マンを経て独立し現職。日本版バイヤーズエージェント。著書に『素人でもできる賢くマンション・住宅を売る方法』ほか。
 

大熊重之
全国古家再生推進協議会理事長
塗装業のかたわら古家再生で経営者・サラリーマン・主婦の大家を生む。共著に『儲かる!空き家・古家不動産投資入門』。