会社の恥ずかしい課題も事前に開示する

もちろん、会社として恥ずかしい課題も開示します。図表4をご覧ください。

給料が安い、固定賞与がない、社員の定着率がよくない、上司のマネジメントが良くない、成長が鈍化している……このような課題もすべて開示します。そうすることで、入社後の「こんなはずじゃなかった」退職を防げます。

求職者・学生が最も欲しがっている情報は「会社の課題」であり、ネットの情報を検索し必死に調べます。このような課題を会社から誠実に正直に開示することで、求職者・学生からの誠実ポイントは上がります。

しかし、正直に書くことで「この会社の課題開示は素晴らしいが、ここまでの課題があると入社するのはどうかなあ?」となってしまう可能性もあります。課題は正直に伝えるだけで終わりではありません。

課題の解決の方向性を、図表5に示すような「3年後はこんな会社になります(中期経営計画)」に示します。そして「3年後うちの会社はこう変わっていくんだ」ということをセットで求職者・学生に伝えることで、課題解決の方向性を示せます。

たとえば、給料が安いという課題については、3年以内に「年収の平均上昇率15%」「業績連動型賞与の導入」というような取り組みを開示します。「現在は課題が多い会社だが、社長と我々で3年間で課題を解決し、魅力的な会社をつくっていくんだ! ○○さんも一緒に魅力的な会社づくりをしませんか?」といったような誘い方をします。その誘いに魅力を感じた方には入社してもらえます。

「受け入れてもらいたいこと」を明確に

この中期経営計画に課題の解決の方向性だけではなく、社長が考えるN年後の「なりたい姿」を併せて記載し求職者・学生にアピールしていきます。

白潟敏朗『知らない人を採ってはいけない 新しい世界基準「リファラル採用」の教科書』(KADOKAWA)

2つ前の図「前提条件(2):嘘をつかない」の図を再度ご覧ください。図の下の方に「受け入れてもらいたいこと」という箇所があります。これは、会社で変えるつもりがない仕組みやルール、決まりごとなどです。すなわち、社長が想いやこだわりをもって取り組んでいること、事業の性質上仕方がないことです。人によっては、課題だと思うかもしれませんし気にならない方もいるでしょう。ここをごまかして、誰にでも好かれようとすれば、入社後に感じたギャップでやはり退職してしまうことになります。

「受け入れてもらいたいこと」は、踏み絵の役割も果たします。気になるなら入社しない、気にならないなら入社する。求職者・学生はいずれかの判断をします。「受け入れてもらいたいこと」を事前に開示しなければ、先ほどの課題と同様に大変なことになるので、正直にすべてを開示します。

来てほしいあまり、少しでも会社をよく見せたいというのは人の性です。しかし、待っていれば大量に応募が来る時代ならまだしも、労働力人口激減時代にこれをやってしまうと、いつまで経っても社員の定着率は上がりません。何よりも、「自社に確実にマッチする人」を「最短距離で」「確実に」採ることが目的のはずです。

そのためには、入り口で自社を大きく見せたり、職場の課題をうやむやにしないことです。課題は課題できちんと洗い出し、明確にして、解決できることから解決していけば、会社の魅力も向上していきます。手間はかかりますが、採っては退職……を繰り返していては未来はありません。嘘をつかずにネガティブ情報も最初から開示する。これが、自社に確実に合う人を確実に採っていく最短距離なのです。

白潟敏朗(しらがた・としろう)
リファラルリクルーティング 社長
1964年神奈川県三浦半島油壷生まれ、宮崎県宮崎市青島育ち。埼玉大学経済学部経営学科を卒業し、1990年に監査法人トーマツに入社。経営、戦略、業務、IPOのコンサルティングを経験。1998年からISOコンサルティング会社・審査会社の立上げ。2006年にトーマツ イノベーション株式会社設立、代表取締役社長に就任。2014年10月に独立し、白潟総合研究所を設立。2017年にリファラルリクルーティング株式会社、2018年に1on1株式会社を設立。
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