手放した「手」で次の可能性をつかむ

私にはインターネットオークションを手放したその手でつかみ取るべき、BtoBオークションという次の選択肢とその可能性のすごさが、はっきり見えていました。

状況がはっきりしているのであれば、可能性が減少していく一方の市場からは、いち早く前向きに撤退し、次の足場を築くべきです。

この前向きな撤退と切り替えは、SOUでくだしてきた決断のごく一例です。その後も他社が開催するBtoBオークションからは完全に撤退し、オークション自体を自社で開催するという決断をしています。そのオークション会場は、現在では品川の本社オフィス内にありますが、ほかにもっと適した場所があるならば、いまの場所で続けなくてはならない理由はありません。

戦力外通告を受けても手放せなかったサッカー

私が「撤退」の決断を、おそらく多くの人に比べてよりスムーズに行えたのには、過去の経験が影響を与えています。

私は、高校卒業後に入団したJリーグのチームであるガンバ大阪から、3年目で戦力外通告を受けています。もちろん、それは自分にとってたいへんショックな出来事でした。

私にとってプロサッカー選手とは、Jリーグが始まった小学生のころからずっと憧れ、いつかは自分もそうなりたいと願い、日々の研鑽を重ねてやっとのことでつかみ取ったポジションでした。そうまでして手に入れたそのポジションを戦力外通告によって手放さなくてはならない現実は、どうしても受け入れがたいものでした。

こんなはずではない─―。

そして戦力外通告を受けてもなお、私は、サッカー選手でいつづけようとしました。具体的には、トライアウトを受けたのです。

ありがたいことに、ガンバ大阪の先輩である元日本代表の大黒将志さんが、コンサドーレ札幌の知り合いに「嵜本がトライアウトを受けるから、見てやって」と伝えてくれてもいました。