個人の価値が見抜かれる社会に

【三浦】AIが社会を変えるかと言えば、多分、結構大きく変えるでしょう。でも今までだって(コンピュータやインターネットの登場などの)大きな変化はあったわけで、その変化に従属してきた人にとっては、今までとあまり変わらない。

【落合】そうですね。(変化に合わせて)労働賃金が最適化されるだけで。「デジタルリバランス」と我々はよく言うんですが、デジタルになることで限界費用や限界効用、資本回収率、経済成長、多様性、現場の回し方など、ミクロからマクロまでもう一回調整されることが多分にあると思ってて。つまり(さまざまなビジネスの)損益分岐点は変わるし、限界費用や賃金の平衡点も変わってくる。この平衡点がズレるっていうのが一番大きな変化だと思います。たとえば極端に賃金が低くなる人は出てくると思いますが、その職業がなくなるかと言えば多分なくならない。それが結論。ただ、その職業をやって生きていけるかと言えば、生きていけない人ばっかりになる職業もある、と。

【三浦】変えられないならね。

【落合】そう、変えられないなら。でも、結局そんな世界では生きていけないから、変えるでしょって話。

【三浦】ビジネスマンにアドバイスするとしたらどうします?

【落合】タコが擬態するようにスーツを着ることでお金をもらっている人とか、イスを温めに会議に出るだけでお金がもらえる人たちっていますよね。でもたとえれば、「皆がサーモグラフィーカメラを付けてたら、擬態は関係なくなる」。擬態力を鍛える前に、自分だけの価値をつくりましょう、と。そこを見抜くのがデジタル社会だと思いますけどね。

【三浦】テクノロジーの変化ということで言えば、AIの進化に加えてブロックチェーン(仮想通貨の基盤技術としても知られる最先端の情報管理技術のこと)が合意を代替していくようになると、落合さんが「擬態」と呼ぶような人たちの中の専門職、たとえば弁護士とか公認会計士とか契約業務にかかわる人たちの、これは裁判所も含めてですけど、仕事がガサッとなくなるというのはあるような気がしますね。

【落合】電子決済が進んでネット上で自動管理されるようになれば、税理士的な計算は必要がなくなる。キャッシュレス化した国で税理士がほぼ消滅したという話をよく聞きますけど、日本も労働効率からの観点でやがてそうなるかもしれない。でも日本は現金を愛しすぎるから、そうはならないかもしれない。それでも、会社からもらうお金が日本円ではなくて、トークン(代用貨幣。お金の代わりに発行されるもののこと)や株や仮想通貨でもらったりすることが今後、非常に増えるんじゃないですかね。