海外から人を吸い寄せ、東京を「第三世界」に

【三浦】むしろ、中国人に実物資産を持ってもらったほうがいいんじゃないかと思うんです。法令はいつでも変えられるんだから、いざとなれば接収できるし。日本は島国だから領土というものがしっかり定義されている。この特徴を生かした戦略を採るしかないと思っていて。「この域内は安定してますよ」「この域内では安定したビジネス取引ができますよ」ということで世界からヒト、モノ、カネを取り込んでいくしかないんじゃないかと。

【落合】あとはダイバーシティーを向上させて各国では住みにくい人たちが集まる第三世界にするというのが1つの考え方だと思います。現にそうなってますよね。東京って今。

【三浦】日本はこれから超少子高齢化になって、生産年齢人口がシュリンクしていくわけです。そういう時代にはこれまでのように日本人から何が何でも税金を取るという考え方ではなくて、この守られている日本の領土内の福祉というか、クオリティ・オブ・ライフに着目した税制に変えていくべきだと思う。人口が減っている日本は最終消費地としての魅力は減退しているけど、住みやすさみたいなものは魅力なのだから、それとセットで戦略を考えていくべきだと思う。

【落合】ヨーロッパ的に考えれば、明らかに日本のブランディングは失敗している。ヨーロッパ的に考えてブランディングを成功させるには、恐らく、減価償却ベースで物事の価値を判断するのをやめなければいけない。たとえば100年経った仏像を宗教法人以外が所有したときに、それに価値があるかといったら、価値ゼロですから。

【三浦】でも、実際日本の家って30年経つと本当に魅力がないわよね。

【落合】それを魅力があるようにするにはどうしたらいいか。たとえば香港のマンションとかってあまり安くなりませんよね。あの感覚が大切で、対外的に価値があるようにどうやって持っていくか。我々日本人にとっては価値ゼロになってしまいそうなものを価値ゼロにしないことによってGDPが稼げる。国外の人に日本の何かを買ってもらう、つまり最終消費地としての日本の魅力というのは、短期間で資産が目減りする制度をやめたときに出てくると思います。

たとえば、実質ゼロ円のコンクリートの壁にバスキア(世界的に有名なアメリカ出身の前衛芸術家。故人)がしゃーっと絵を描いただけで100億円になる。ちゃんとやってこなかっただけで、日本は本来、そういう付加価値をつくっていける国だと思います。

落合陽一(おちあい・よういち)
メディアアーティスト
1987年生まれ。メディアアーティスト。筑波大学学長補佐・准教授。デジタルネイチャー研究室主宰。Pixie DustTechnologies, Inc.CEO。著書に『魔法の世紀』(PLANETS)、『日本再興戦略』(幻冬舎)など。
 

三浦瑠麗(みうら・るり)
国際政治学者
1980年生まれ。国際政治学者、法学博士、東京大学政策ビジョン研究センター講師。専門は安全保障を中心とした国際政治。テレビ、新聞など各メディアでコメンテーターとしても活躍。著書に『シビリアンの戦争』(岩波書店)、『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)など。
 
(構成=小川 剛 撮影=大沢尚芳)
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