世界で日本はどう生き残るか。日本再興戦略

なぜGAFAに中抜きされるのか

【三浦】AIやIoT、ブロックチェーンといったテクノロジー覇権という観点で言えば、日本の先行きは厳しいですよね。コミュニケーションを代替する新しい価値を生み出している企業群に日本勢はいないし、合意を代替する新しいブロックチェーンの波が仮にやってきたとしても、多分、日本企業の存在感はない。結局、日本はプラットフォームをつくれないから、アメリカ勢を受け入れるしかない。

【落合】ハードウエアとソフトウエアの違いこそあれ、トヨタもソニーもプラットフォームだと思いますけどね。ただ、彼らが伸びた時代は社会全体が保護貿易的だったと思う。それは中国とて同じことでGAFA(IT分野で巨大プラットフォームを形成して個人データを圧倒的な規模で集める企業群、Google、Apple、Facebook、Amazonの4社のこと)に立ち向かうために、(中国大手IT企業の)アリババやテンセントはグレートファイアーウォール(中国のネット検閲システム)なしでは(中国市場における覇権を)築けなかった。そういう保護貿易的なプロセスを今の日本は何も持ってない。裸で戦場に突っ込んでいけば、GAFAにやられますよ。

【三浦】そうですね。目下の話で言えば、日本とアメリカは物品の貿易協定を結ぼうとしている。「FTA(自由貿易協定)」と呼ばずに「TAG(日米物品貿易協定)」と呼ぶことで国内の批判をかわそうとしているけど、もっと戦略的に考えればあそこにアメリカが強いサービス分野を入れてグリグリ日本が押し込むって戦略もありえたと思う。トランプ大統領が声高に叫ぶアメリカの貿易赤字って物品分野だけなんだから。

【落合】黒字のハードウエアばかり攻め込まれて、日本が赤字のソフトウエアを関税対象にできないのは完全に敗北していると思いますよね。

【三浦】そのあたりは日本社会がまだ追いついていない新しい世界だと思うわけです。それに気付いていないから、日本は潮流に乗り遅れる、いつも。グローバルに決まった勝者を受け入れる形で後追いするしかない。

【落合】保護貿易にしてローカルのコミュニティを育てない限り、国の利潤は外に流出する。我々はデジタル植民地ですよ。iPhoneやアンドロイドのスマートフォンからアップルストアや(グーグルの)アンドロイドストアで物を買っても、3割はアップルやグーグルに自動的に抜かれる。

【三浦】ま、今までも中抜きされてきたんだから、今さらいいんじゃないのってことなんでしょうね。日本の社会的には。

【落合】搾取されるのが好きな国民性は変わらない。

【三浦】政治的な意味も若干交ぜちゃうと、日本の安全保障の脆弱性を生かしてトランプ政権は通商交渉で押し込んできてますよね。それが日本をもう少し自立方向に押しやると思う。

【落合】スマートシティとか、ソサエティ5.0(日本政府が提唱する科学技術政策のスローガン)祭りで中国の都市とコラボしようみたいな動きがちょっと増えてますね。中国との距離が近くなっているプロセスというか、今までとちょっと違ってきている感じはしますね。

【三浦】新しい外交プレッシャーが生じたときに日本が取りうるさまざまな行動が、結局は中国への接近になっていくだろうな、と。でも中国の最大の問題はやはり政治リスク。その意味で、自分たちの体制が信用できないから日本に実物資産を持ちたいという中国人の気持ちは完全に理解できる。

【落合】何なら、こっちに住みたいと思っているのもよくわかる。