各ジャンルで「学歴」はどんな影響を及ぼしているのか。今回、それぞれのジャンルで強い大学を徹底調査した。第8回は「稼ぐ医者」について――。

※本稿は、「プレジデント」(2018年10月1日号)の特集「高校・大学 実力激変マップ」の掲載記事を再編集したものです。

“親の開業医率”なら、帝京大、東京医科大

医師の所得の差はどこでつくのか。一般論でいうと、開業医と勤務医では開業医が高く、勤務医でも地方と都市とでは地方のほうが高い。学歴との相関を直接示すデータを探すのは難しいが、これらを組み合わせて考えると、所得の高い医師を輩出する大学はある程度推定できる。

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開業医になる人の学歴と、勤務医になる人の学歴には違いがあって、偏差値が高い医学部の卒業生ほど勤務医が多い。この図式はある程度決まっている。東大OBはいい意味での権威主義というか、あまりカネ、カネとは言わない。進路は研究畑が比較的多い。一方、偏差値が低い――といっても医学部相応だが――大学の多くは私立であり、研究畑に進む層が少ない。

私大医学部は授業料が高く、親の経済力は必須の条件だ。その親が、後継ぎの欲しい開業医……という設定なら、私の経験上では帝京大学と東京医科大学が思い浮かぶ。同じ私大でも、慶應義塾大学医学部生の親の“開業医率”は比較的低く、授業料もほかより安い。東大とは対照的に、臨床に進む人が多いのも特徴だ。

競争激化で「開業」が難しくなっている

ここ数年の大学医学部は、国公立は別として入学金・授業料を下げる傾向にある。無論、私立文系に比べればはるかに高いが、横並び意識が強い。2008年に順天堂大学が大幅に下げて偏差値を上げてから、他が追随した。帝京も例外ではない。やはりどの大学も、根底には優秀な学生を集めたいという思惑がある。

もっとも肌感覚でいうと、近年は高収入が見込めるはずの開業医の2世があまり出ていない。以前と違って、医学部卒でも医師ではない仕事に就く道もあるし、昔のように親と同じ診療科を選んで家を継ぐのはトレンドではなくなりつつある。開業するにしても親とはまったく異なる診療科、まったく異なる土地であることも少なくない。

今は、競争の激化で開業そのものが難しくなっている。都市郊外には医院の看板がひしめいているが、これは儲かる開業場所が駅周辺やショッピングモール内に限られるため。東京都内は医学部のある大学が13あるから、卒業しても都内での開業はライバルが多すぎて厳しい。千葉や茨城、埼玉の3県のさらに田舎のほうなら、今も医師不足なのでまだ可能性がある。