“心の闇”に直面した時、人は高額な壷を買う

田所さんの失敗は、ライフプランがないにもかかわらず会社を辞め、貯金のほとんどを留学資金で使い切ってしまったことに尽きるでしょう。彼女のようにお金のリテラシーもある高学歴の人が、ちょっとしたきっかけで全財産を失ってしまうことがあるのです。定職もなく酒浸りでギャンブル狂みたいな人ならまだ想像がつきますが、真面目に生きている人でも“心の闇”を突きつけられた時、判断を誤ってしまうのかもしれません。

田所さんの場合は年齢が鬼門になりましたが、失恋したり仕事で失敗したり、きっかけはいろいろあるでしょう。そんな時パニックになり、有り金すべてを株に投資してしまったり、勧められるまま壺を買ってしまったりする。こういった話を聞くにつけ、“あっち側”だと思っていた金銭的転落は日常と隣り合わせなんだと感じるのです。

お金で失敗する人は“他人軸”で物事を決める

前回の中山さんしかり、お金で失敗する人は“他人軸”で物事を決めている人が多い気がします。彼の場合は自分の好きなものではなく、周りからかっこいいと思われるブランド、という基準で物を買っていました。田所さんも、35歳で未婚ということが周囲の目からどう見られるか気にした結果、貯金をすべてはたいて留学してしまった。お金をきちんと貯められている人は、自分の軸がきちんとあります。軸がある人は他人に何を言われようとも己を貫き通したお金の使い方、生き方ができているように思います。

田所さんは年収的にはかなりダウンしてしまいましたが、翻訳者として再出発をしようとしています。今は比べる同僚もいないから大丈夫かなと思いつつ、微力ながら、彼女の征く道を応援していきたいと思っています。

高山一恵(たかやま・かずえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)
Money&You取締役。1級ファイナンシャル・プランニング技能士。慶應義塾大学卒業。2005年に(株)エフピーウーマンの創業に携わり10年間取締役を務めた後、現職へ。主に女性向けに、全国で講演、執筆・監修、書籍、マネー相談を行っている。著書に『マンガでわかるiDeCoのはじめ方 ライバルはイデ子!?』(きんざい)、『35歳までにはぜったい知っておきたいお金のきほん』(アスペクト)など多数。
(聞き手・構成=小泉なつみ 写真=iStock.com)
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