経営基盤を“筋肉質”にするために

ライザップはこのまま衰退していくのだろうか。将来のことなので確実なことは言えないが、筆者の見解としては、徐々に回復していくと予想する。なぜなら、決算説明会資料によると、主力の「ボディメイク事業」は売上高も会員数も順調に増加しているからだ。しかも、「RIZAP GOLF(ライザップゴルフ)」や「RIZAP ENGLISH(ライザップイングリッシュ)」も軌道に乗りはじめている。

川口 宏之・著『いちばんやさしい会計の教本』(インプレス)

すでに認知度は高く、年間100億円ほど投じている広告宣伝費および販売促進費を削減しても、売上に与える影響は軽微だろう。これはコスト削減の余地が十分にあるということだ。さらに、この1月に代表権を返上したものの構造改革担当である元カルビー会長の松本晃氏は健在だ。手腕を発揮し、不採算子会社のテコ入れや整理が進めば、収益力が回復するだろう。

唯一の懸念は、今回の赤字発表で会員離れが進んでしまうことだ。前述のとおり前払制度を取っている会社なので、会員としては事業の存続が心配になる。破綻した旅行会社の「てるみくらぶ」や英会話の「NOVA(ノバ)」も前払制度だった。同様の事態を連想し、多くの会員が返金を求めたり、新規会員獲得が極端に苦戦したりすることが起きれば、歯車は逆回転する。

まずは事業の存続に問題がないことを現会員や潜在会員に周知し、実直に既存事業を成長させることで、筋肉質な会社に生まれ変わることが求められる。得意のレバレッジ経営の解禁は、財務基盤が十分に整ってからでも遅くはない。

川口宏之(かわぐち・ひろゆき)
公認会計士
早稲田大学会計大学院非常勤講師。監査法人での会計監査、ベンチャー企業での取締役兼CFOなどを歴任。現在、多数の上場企業の社員研修や各種団体主催の公開セミナーなどで、「会計」をわかりやすく伝える人気講師として活躍中。著書に『決算書を読む技術』『決算書を使う技術』(共にかんき出版)などがある。
(写真=時事通信フォト)
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