「『出社しないのは無断欠勤。懲戒解雇だ』とプレッシャーをかけられるおそれがあります。懲戒解雇になると退職金は出ず、再就職も困難に。そうしたトラブルを避けるには、内容証明郵便で送るなど、証拠が残る形で退職届を渡したほうがいいでしょう」
会社が離職票を出さないケースもある。退職者は離職票をハローワークに提出しないと、雇用保険の失業給付金をもらえない。会社は離職票を発行する義務を負うが、嫌がらせで出し渋るのだ。
「出し渋られたら、ハローワークに相談しましょう。会社に連絡がいって、普通はその段階で解決します」
悪質なのが、「辞められたら業務に支障が出る。損害賠償しろ」と脅されるケースだ。
これは2つの場合に分けて考える必要がある。まず、「会社の承諾なく辞めるときはお金を払う」というルールが事前に定められていた場合だ。労働基準法には賠償予定の禁止という条文があり、あらかじめ違約金や賠償を規定した労働契約を締結することを認めていない。ゆえに、このルール自体が無効だ。
「事前にルールがない場合は、賠償請求する理由が必要になります。しかし、労働者が辞める権利は強く保護されており、権利を行使することが違法になるケースはほとんどない。紛争になれば会社側が不利です」
(答えていただいた人=弁護士 千葉 博 図版作成=大橋昭一 写真=iStock.com)