日本企業には米中双方から注文が殺到する可能性

中国は今、製造業発展のための長期戦略「中国製造2025」を掲げ、アメリカのようなハイテク・モジュラー国を目指しています。シーメンスの戦略もあり、レゴブロックのようにシステムを組んだモジュラー型の自動化工場を中国は次々と導入しています。

これらの動きを踏まえると、今後は米中両国がハイテク・モジュラー国としての覇権を争うことになります。より高性能な製品をモジュラー型で作るには、モジュール自体は高度でなければならないため、インテグラル化します。すると、インテグラル型が得意な日本企業には米中双方から注文が殺到する可能性があります。

したがって、日本企業が得意としてきた現場力は、今後も強みとして地道に向上させていくことが求められます。そのうえで、これまで弱かった本社の戦略構想力を高めていくことが重要です。強い現場と強い本社の両輪が回れば、日本企業はそうそう負けないはずです。

藤本隆宏(ふじもと・たかひろ)
東京大学大学院経済学研究科教授・ものづくり経営研究センター長
東京大学経済学部卒業。三菱総合研究所を経て、ハーバード大学ビジネススクール博士課程修了(D.B.A.)。専攻は技術管理論・生産管理論。著書に『現場から見上げる企業戦略論』『日本のもの造り哲学』『能力構築競争』ほか多数。
(構成=増田忠英 写真=AFLO)
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