日本企業は「オープン型」での戦い方を苦手としてきた
この考え方を用いると、「重さのない世界」=ICT空間では、工夫次第でソフトウエアやデバイスやサービスシステムをオープン・モジュラー型アーキテクチャにしやすく、「重さのある世界」で、特に高い機能を要求される製品は、部品間で細かい設計調整を必要とする複雑なインテグラル型アーキテクチャになる傾向があります。
日本の優れた生産や開発の現場は、調整力やチームワークに優れ、インテグラル型の製品を得意としてきました。日本の自動車メーカーが得意とする低燃費・高機能のガソリン車やハイブリッド車は、インテグラル型製品の代表格です。
一方、アップル、グーグル、アマゾンなどは、オープン・モジュラー型の製品やシステムの勝者(=プラットフォーム盟主企業)です。勝者となるには、単に良い製品をつくるのではなく、それを出発点として、業界標準インターフェースを構築し、結合可能な他社の製品(補完財)を仲間に引き込み、そのエコシステムの盟主となり、他社の力も利用しながら巨大企業に成長するための高度な戦略が要求されます。
大仕掛けな本社戦略が弱い傾向があった日本企業は、こうしたオープン型での戦い方を苦手としてきました。
上空は無理でも、地上や低空では勝負できる
デジタル化が進む現在の産業世界は、「上空」と「地上」、その間をつなぐ「低空」の三層のアナロジー(類比)で捉えることができます。
「上空」はICT層です。この空間はアメリカ主導で、破壊的な革新が繰り返されています。設計思想はオープン・アーキテクチャであり、前述のプラットフォーム盟主企業が割拠しています。この世界では、残念ながら日本企業の存在感はほとんどありません。
「地上」はものづくりの現場です。この層は、今も現場改善など進化の世界で、現場力や技術力をコツコツ地道に積み重ねてきた日本やドイツの産業現場が依然として力を持っています。