サブスクリプションモデルの進化

利用者に月々など一定期間、料金を支払ってもらい、継続的にサービスを提供するビジネスモデルを「サブスクリプション」モデルと言います。動画配信サービスのネットフリックスなどが有名ですが、デジタルの世界だけにとどまりません。トヨタ自動車が2019年から自動車のサブスクリプションサービス開始を発表するなど、リアルな世界でも増えつつあります。なぜでしょうか。

ネスカフェ アンバサダーもサブスクリプションの代表例。(AFLO=写真)

実は、サブスクリプションモデルは以前から存在していました。その目的によって、「会費型」と「定額プラン型」の2種類に分けることができます。会費型の代表例はフィットネスクラブ(スクール方式)です。利用するたびに課金するのではなく、1カ月間利用し放題にすることで利便性とお得感(サービスを最大利用できるという感覚)を訴求します。一方、定額プラン型の代表例は携帯電話のデータ利用料金(バイキング方式)です。料金を一定にすることで、利用した分だけ支払う従量課金への不安を払拭します。これらのサブスクリプションサービスは、定額にすることで需要を喚起する、価格戦略として採用されてきました。

それに対して、昨今新たに登場しているサブスクリプションは、価格戦略に加えて、00年代以降の産業構造の変化に対応して登場した進化系モデルと言えます。その変化とは、「クラウド」「LTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)」「コネクティド(IoT)」「使用経済」の4つです。それぞれに対応したサブスクリプションモデルについて、事例を交えて説明しましょう。

1番目は、クラウドの登場によって実現した、動画配信や音楽配信などのストリーミングサービスです。映画や音楽などのコンテンツは、個別に購入すると費用が高くなります。しかし、別のことをしながら聞いたり、流しっぱなしにするニーズがあり、定額制の魅力は映画や音楽好きにはとても大きなものがあります。しかし、DVDやCDからの移行モデル(ダウンロード)では、定額にすることができませんでした。クラウドの発達が供給コストを下げたことで初めて、定額化が可能になりました。サブスクリプションモデルは、コンテンツサービスの需要拡大につながり、ダウンロードモデルより競争上優位になりつつあります。