ソフトだけでなく、ハードでも展開

2番目は、00年代から始まったLTV指向です。1回限りの販売ではなく、顧客に継続利用してもらうことで利益を上げる考え方で、特にダイレクトセールスに影響を与えています。

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成功例として知られるのが「ネスカフェ アンバサダー」です。コーヒーマシンを職場に無料でレンタルし、職場の代表者(ボランティア)を通じて、コーヒー粉を原則毎月購入してもらうサービスです。12年のスタート以来、職場のコミュニケーション活性化にもつながることが評価され、アンバサダー申込件数は40万件以上(18年11月現在)、飲まれているネスカフェは年間10億杯を超えます。

17年6月にスタートした「キリンホームタップ」は、家庭にビールサーバーを貸し出し、工場直送の本格的な生ビールを月額6900円(税別)から提供するサービスです。現在は新規会員募集を停止していますが、申し込みが集まりすぎてサーバーが供給できない状況のようです。

いずれも顧客に機器を無料で貸し出し、毎月定額で利用し続けてもらうことで、初期投資分を回収して利益を上げる、LTV指向のサブスクリプションと言えます。

3番目はコネクティド(IoT)、つまり、常時あるいは定期的にネットワークに接続することによって、利便性を高めるサブスクリプションです。ネットワーク接続によって、顧客ごとに最適なサービスを提供するパーソナライゼーションを実現します。そのためには、1度限りのサービスよりも、サービスを継続できるサブスクリプションが適しています。

17年3月にスタートした「ネスレ ウェルネス アンバサダー」は、専用マシンを無料でレンタルし、「ウェルネス抹茶」などのドリンクを定期購入してもらうサービスです。基本的な仕組みはネスカフェ アンバサダーと同じですが、大きく異なるのが、専用の診断サイトとアプリで、各利用者の食生活や生活習慣をチェックし、個別に必要な栄養素をアドバイスするところです。利用者は、そのアドバイスに沿ったウェルネス商品を飲むことで、足りない栄養素を効率的に摂取できるようになっています。

18年3月にスタートした資生堂の「Optune(オプチューン)」は、一人ひとりの肌に適したスキンケアを選んで提供するIoTスキンケアシステムです。専用アプリによる肌測定と、気候や気分・コンディションなどのデータをクラウド上で分析し、スキンケアパターンのデータを家庭に設置した専用マシンに送信します。マシンには5本のカートリッジが内蔵されており、配信されたデータに基づき、その時々の肌の状態に合わせたリキッドが抽出されて提供されるサービスです。まだβ版であり、成功するかどうか現時点ではわかりませんが、最新型のパーソナライゼーション型サブスクリプションと言えるでしょう。