「利益を上げなければ、社員を幸せにできない」は間違い
「社員を幸せにしたければ、まず利益を上げること。会社が儲かればこそ、社員に利益を還元できるのだから」
こんなふうに考える経営者は、きっと多いことでしょう。しかし「幸福学」と「経営学」を組み合わせた最新の研究によれば、このような考え方は必ずしも正解ではありません。
誰でも昇給したり、ボーナスをもらったりするのは嬉しいものです。しかしその喜びは一時的であり、長続きしません。継続的な幸福感を社員に抱いてもらうには、他の要因が必要なのです。それを端的に示したのが、表の「幸せの4つの因子」です。
私は「幸せとは何か」「どんなときに人は幸せを感じるか」などを探る「幸福学」という学問を研究しています。従来の心理学の研究では「感謝する人は幸せ」など、部分的な幸せの条件しか判明していませんでした。
そこで全体像を明らかにすべく、過去の幸福研究の成果から長期的な幸福感に資する心的要因を集め、アンケートを日本人1500人に実施しました。その結果を多変量解析という分析法のひとつである、因子分析を用いて分析してみました。すると人が幸せになるためのカギは、たった4つの因子に集約されたのです。詳しく説明しましょう。
みんなのおかげで自分がいると思える人は幸せ
まず「やってみよう」因子というのは、自己実現と成長の因子です。自分の仕事にやりがいを感じながら目標に向かって努力・学習している人は幸せだということです。成長の実感や自己実現の達成感を得られれば、さらに幸せを感じることができます。
「なんとかなる」因子は前向きと楽観の因子です。ビジネスでいえば、リスクをとって新しいことに挑戦できる人は幸せだということを指します。
「ありのままに」因子は、独立と自分らしさの因子です。他人と自分を比べたり、人の目を気にしすぎたりせず、自分の強みを推し進められる人は幸せだということです。
「ありがとう」因子は、つながりと感謝の因子です。周囲の人たちと豊かなコミュニケーションを持ち、まわりのみんなのおかげで自分がいると思える人は幸せだといえます。