値引きをせずに適正価格で商品を売る方法

今日もスーパーマーケットなど小売店の店頭では、「○%引き」「SALE」などと書かれたPOPが価格の安さを消費者にアピールしています。こうした低価格戦略は、商品をより多く販売するためには有効な方法です。しかし、メーカーや小売店にとっては3つの悪影響があります。

第一に、商品のブランド価値が毀損されます。価格を下げることで、その商品はその価格なりの品質だと消費者に判断されてしまうのです。第二に、当然のこととして利益は大幅に低下します。そして第三に、価格を元に戻したときの消費者に与えるインパクトは、価格を同額下げたときよりもはるかに大きくなります。

では、値引きをせずに適正価格で商品を売るためには、どうすればよいでしょうか。答えは、商品が持っている本当の価値を消費者に訴求することです。消費者が商品を価格で比較してしまうのは、その商品の本当の価値が消費者に伝わっていないためです。多くの商品は、もともと持っている価値を訴求しきれていない場合が多いのです。

商品の価値は、4階層構造と考えられています(図参照)。「基本価値」は商品の基本性能における価値、「機能的価値」は基本性能に基づいた機能面における価値、「情緒的価値」はその商品を使ってみて感じる感覚的な価値、「自己表現価値」はその商品を使うことで「自分はこうだ」と表現してくれる価値のことです。例えば、あるシャンプーブランドなら、基本価値は「洗髪」、機能的価値は「フケ・カユミ防止効果」、情緒的価値は「仕上がりがさっぱり」、自己表現価値は「身だしなみ」です。

日用品ブランドが訴求しきれていない本当の価値

昨今は商品のコモディティ化(一般化)が進み、基本価値や機能的価値だけでは他社商品との差別化が困難になっています。それだけに、自己表現価値や情緒的価値を消費者から引き出すことが重要になります。プレステージ(高級)ブランドが高価でも売れるのは、価値構造が逆ピラミッド型で自己表現価値や情緒的価値の占める割合が高いからです。

それに対して日用品ブランドの価値構造はピラミッド型で、基本価値や機能的価値の占める割合が高く、自己表現価値や情緒的価値はほとんど意識されていません。そのために他社商品と差別化できず、価格競争に陥ってしまうのです。

自己表現価値や情緒的価値は、日用品ブランドが持っていながら訴求しきれていない本当の価値です。これらの価値を訴求し、プレステージブランドと同じ逆ピラミッド型の価値構造に近づけることができれば、消費者にとっては少々高いと感じる価格でも、納得して買ってくれるロイヤルなファンを獲得することができるはずです。

このように、安売りをしなくても消費者に納得して購入してもらうために、その商品の本当の価値を見つけて訴求するプロモーションを「価値創造プロモーション」と呼んでいます。