トヨタの豊田章男社長が非常に慕う社員500人の会社

私たちが視察に行くような会社は、かなり幸福度を高めることに成功しているので、その一体感ときたらまるで家族のようです。組織規模が大きいと、社長の考えを浸透させるだけでもひと苦労です。

しかし、たとえば家族4人がみんなで幸せになるのは、さほど難しいことではありません。その点では社員が少ないほうが、みんなを幸せにしやすいのです。それに自分の任期さえ無事に勤めればいいという大企業のサラリーマン社長よりは、「祖父の代から働いてくれている人たちを大切にしたい」というオーナー経営者のほうが社員を幸せにできるに決まっています。

社員数約500人と小規模ながら社員を大事にする会社として知られる伊那食品工業という会社があります。この伊那食品の塚越寛会長は「会社は社員の幸せのためにある」と断言しているのですが、この塚越会長のことをトヨタグループの豊田章男社長が非常に慕っていて、いま塚越会長はトヨタグループへさまざまなことを教えに行っているそうです。

塚越会長は「500人の伊那食品でできることが、36万人のトヨタグループでできないはずがない」と明言しています。「大企業で、なおかつ幸せ」という会社が日本から次々に生まれる日も近いかもしれません。

前野隆司(まえの・たかし)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授
1962年、山口県生まれ。東京工業大学修士課程修了。キヤノン入社後、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員、ハーバード大学客員教授、慶應義塾大学理工学部教授等を経て、2008年より現職。近著に『幸福学×経営学』など。
(構成=長山清子 写真=時事通信フォト)
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