さらに岩田さんがこれからチャレンジしていこうとしているのが、バリューチェーンにおける織物・繊維よりもさらに上流の「原毛の羊を育てる」段階から、アパレルの最終製品までを繋いでいくことなのです。

岩田さんは17年、最高の原毛を追い求め、オーストラリアのタスマニア島にあるウィントン牧場を訪れたそうです。そこで飼われているサクソンメリノ種の羊の毛が、世界最高峰なのだと現地で実感して帰国します。

三星生地のスーツを愛する人が、三星の生産現場を知りたくて尾州を訪れ、さらにはタスマニアへ、牧場を訪れる旅に出る。そんな“ウールツーリズム”を実現させる。そんな壮大な夢を叶えようと挑んでいるのです。

▼第二創業成功のポイント:息子が入社したいと思う「魅力ある職場」をつくる

会社概要【三星毛糸】
●三星グループ:三星毛糸・三星染整・三星ケミカル
●本社所在地:岐阜県羽島市正木町
●資本金:三星毛糸・三星染整2000万円、三星ケミカル1000万円
●売上高:23億円
●従業員数:150人
●沿革:1887年、岩田志まにより綿の艶つけ業として創業。1931年毛織物の染色整理加工をする三星染整合名会社(61年に三星染整に社名変更)を設立。48年には紡績を手掛ける三星毛糸を設立。
入山章栄
早稲田大学ビジネススクール准教授
三菱総合研究所を経て、米ピッツバーグ大学経営大学院でPh.D.取得。2008年よりニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクールの助教授を務め、13年より現職。専門は経営戦略論および国際経営論。近著に『ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学』。
 

岩田真吾
三星グループ 代表取締役社長
1981年、愛知県生まれ。東海高校、慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2003年に三菱商事、ボストン コンサルティング グループを経て、09年に三星グループに入社。10年より三星毛糸・三星染整の、15年より三星ケミカルの代表取締役社長に就任。
 
(構成=嶺 竜一 撮影=研壁秀俊)
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