これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、ローソンの竹増貞信代表取締役社長のインタビューをお届けしよう――。

既存店の日販を55万円から60万円へ伸ばすことが目標

2016年9月にファミリーマートとユニーグループ・ホールディングスが経営統合し、サークルKサンクスがすべて18年8月末までにファミリーマートへ切り替わる。そして、17年2月にローソンが三菱商事の子会社になった。すでに国内のコンビニの店舗数は5万5000店を超えて、飽和状態との指摘もある。そうしたなか、求められる人材像も変わってきているのだろうか。

──三菱商事の社長業務秘書を務められていた竹増貞信社長が、ローソンに副社長として入社されたのは14年5月。竹増社長の目にローソンというコンビニ事業はどのように映ったのでしょうか。

ローソン 代表取締役社長 竹増貞信氏

流通・小売業と無縁だったわけではありません。三菱商事に入社して初めに配属されたのが畜産部です。2年ほどで食肉販売子会社へ出向し、全国のスーパーや外食に売り込みをかけていました。食肉売り場の一角を借りて、エプロン姿で自前のホットプレートで牛肉を焼きながら実演販売を毎週のようにしていたこともあります。足かけ13年ほど食肉の仕事に携わり、その取引先のなかにはローソンも含まれていました。

その私がローソンに入って実感したのが、「マチの暮らしにとって、なくてはならない社会インフラであり、とても面白いビジネスだ」ということです。

たとえば、18年2月に記録的な大雪となった北陸では幹線道路が寸断されて物流が滞り、多くの小売店が店を閉めました。しかし、ローソンの各フランチャイズのオーナーや店長は「マチを支え続ける」という信念のもとに、お店の営業を続けてくださり、本部も全面的にバックアップしました。そして「ローソンのおかげで助かった。これからも利用しますよ」との高い支持をお客さまからいただけました。

──しかし、国内の店舗数で見るとローソンは2月末時点で1万3992店。ファミリーマートとサークルKサンクスの合計1万7232店に引き離されて業界3位です。

そのことは、ほとんど気にしていません。なぜなら、私たちは店舗数という規模の拡大よりも、一つ一つの店舗の継続・発展を第一に考えているからです。先ほどの社会インフラとして認知していただけるのも、「平時でも非常時でも、ローソンに行けば、自分が必要なモノが揃っている」という、お客さまの信頼感があればこそ。その信頼に応えるためにも、各店舗の売り上げを拡大し、継続していくことを最優先課題に掲げているのです。

現在、ローソンの既存店の1日当たりの平均売上高は約55万円ですが、それを60万円へ伸ばすことを目標に掲げています。しかし、人口減少という厳しい時代に入り、客数を増やしていくのは容易ではありません。それでも客層を拡大し、トータルの売り上げを増やしていく方法を模索しなくてはなりません。