「説明の文字が小さすぎて高齢者には読みづらい」

──そうしたなか、コンビニ事業を担う人材に最も求められている点とは、何なのでしょうか。

それは、お客さまのニーズ、そして商品やサービスのトレンドなどの変化に敏感なことです。各店舗とのつなぎ役であるスーパーバイザー(SV)だけではなく、実は本社スタッフにも、そうした素養が求められています。

そうした変化について最も重要なヒントを与えてくれるのは、やはり「現場のナマの声」です。SVなら週に1回訪問する各店舗のオーナー、店長やクルーと話をすることで、個別商品の売り上げデータなどからでは窺えない、お客さまの真の嗜好や要望をつかめます。

シニアに人気の商品に「うの花」「いわしの生姜煮」があるのですが、私自身ある店舗を訪問した際、年配のクルーの方から「説明の文字が小さすぎて高齢者には読みづらい」といわれました。こういったことを改善し、シニアのお客さまも気軽に来店していただけるようにして、お客さまの層の拡大につなげるわけです。

「荷物を家で待っている時間がない」という新事業

──とはいえ個々人の気づきだけにとどめていたら、組織全体の変革にはつながりません。

そこでもう1つ大切なことは、そうやって得た気づきから「仮説」を立てて「実行」し、その成果の「検証」を行っていくことです。当然、自分1人で実行できるわけがなく、会社全体を巻き込んでいかなくてはなりません。ですから「実行力」や「巻き込み力」も兼ね備えた人材が求められてきます。

──かねてから取り組んでこられた多様な人材を積極的に活用するダイバーシティで、本社スタッフの意識も変化しているようですね。

05年度から本格的に取り組むようになり、その一環として08年入社からは外国人留学生の採用も始めました。11年の間に定期採用したのは男性が773名で、女性が698名とほぼ同数です。外国人留学生も271名を数えます。そうした違う価値観を持った者同士が意見を交わすことで、変化を含めて新たな気づきを得たり、どうしたら周囲を巻き込んでいけるかを日々学んでいくのです。もちろん多様なお客さまへの対応も進みます。

その成果として直近では、午前8時までにスマホで予約すると、当日の18時以降に指定した店舗で商品の購入・受け取りができる「ローソン・フレッシュ・ピック」が、18年3月から東京都世田谷区や神奈川県川崎市などで始まりました。これは「荷物を家で待っている時間がない」というお客さまの声を受け、身近な実店舗を活用していただく新しい試みです。