これからビジネスマンはどう変わるべきか。「プレジデント」(2018年4月30日号)では、特集「いる社員、いらない社員」で、大企業のトップ29人に「人材論」を聞いた。今回は、スターバックス コーヒー ジャパンの水口貴文CEOのインタビューをお届けしよう――。

全店舗合わせた来客数は1日約70万人

日本に第1号店がオープンしてから、22年がたったスターバックス。勢いはいまだ衰えず、2017年9月期の売上高は1709億円と過去最高を記録した。近年はオフィス内でのコーヒー販売、お酒や希少なコーヒーを提供する「リザーブ バー」など、いままでと違った業態も次々展開。これら新たな試みを先導するのが、16年6月CEOに就任した水口貴文氏だ。デジタル全盛の現代、求められる人材像を水口氏の話から探った。

──スターバックスといえば、かゆいところに手の届くサービスが思い浮かびます。働くうえで何を大切にしているのですか。

スターバックス コーヒー ジャパン CEO 水口貴文氏

私たちが重視することの1つに「オーナーシップをもって働く」ということがあります。自律的に、自分で考えて行動する、ということですね。

現在スターバックスには、全店舗合わせて1日約70万人ほどのお客さんがいらっしゃいます。当然、みな1人として同じ人間ではなく、同じ状況ではない。そのとき感じていらっしゃることも違います。そのお客さん一人ひとりに向き合い、求めていることを察して、70万通りの接客をしていきたい。これを実現するには、自分で考えて行動することが必要不可欠です。

──自律的に動くとは具体的にどういうことですか?

マニュアル、テンプレートに頼らないということです。急いでいるお客さんだったら、それを察してよけいなお声掛けなどはせずに笑顔ですばやく対応する。一方で、時間に追われることなくどこか話したそうにしているお客さんが来られたときには、こちらから積極的にお声掛けしていく。こうしたサービスは、現場の一人ひとりが考え、判断があってこそです。相手の要望を見極めることなしに、マニュアル通りの仕事をしてしまっては、「ホスピタリティ(もてなし)」と私たちが呼ぶ、お客さんに心から喜んでもらえるサービスにはなりません。

店舗に限らず、オフィスで働く社員でも同じです。たとえば書類作成にしても、誰が、どのような目的で、いつその書類を読むのかを考える。やっていることは、お客さんの求めることを考えて提供するのとまったく変わりません。