──そのようなスターバックス独自の価値観が社員に浸透しているのはなぜでしょう。

1つ例を挙げると、「オーナーシップをもって働く」「自己変革する」「誠実に接する」「最後までやり切る」といった私たちの「バリュー」を書いたカードがあります。それをパートナー(スターバックスで働く従業員のこと)はみな、常日頃から持ち歩いています。そしてバリューを体現した人には、一言を書き添えてカードを渡す。言い換えると、カードをもらったパートナーは周りから承認を受ける。そのために頑張ろうと主体的になっていきます。地味なようでこうした日々の積み重ねが共通の価値観をつくっていきます。

一方、わが社のミッションや目指していく方向性などの最も大切なことは、1カ月に1度社員を集めて私が直接語りかける機会を設けています。その映像はリアルタイムで全社員が見られるように、イントラネットで動画配信もしている。さらにそのほかの気付いたこと、新しいプロジェクトやそれを打ち出した理由などのメッセージは、定期的に各店舗、オフィスにメール配信します。

定期的な対話で、会社との接点を探る

──とはいえカードを持ち歩き、ミッションを理解するだけでは、社員が主体的に動き出すとは思えません。

ですから、パートナーの一人ひとりがやりたいことと、会社が目指す方向との接点を見つけ、仕事が自分ゴトになる仕組みをつくっています。それは、定期的な対話です。アルバイトは4カ月に1回、店長と1時間は目標設定の面談をします。同じように店長と社員は上司のマネジャーと、2カ月に1回、4時間の面談をする。オフィスで働く人も同様です。

──一店舗あたり24人のアルバイトとすれば、それだけで店長は1カ月に6時間を面談に費やす。社員も含めると、結構な時間になります。

その時間が大事なんです。じっくりと、「あなたはこれからの4カ月間、スターバックスにいる間にどんなことを達成したいか。そしてどんな人生を送りたいか」ということを聞いていく。私たちのビジネスは、人と人が向き合って成り立つものです。この「人」にはお客さんだけでなく、パートナーも入っています。

ビジネスとして成長しつつ、世の中や地域コミュニティに対して貢献し、働いている人が居場所と思える「三方良し」を目指しています。地域コミュニティとのつながりについては、各店舗が独自の企画、イベントを実行している。ここはまさにオーナーシップに任せている部分です。