日本のスターバックスで、コーヒー豆の売れゆきが突出した店が、北海道苫小牧市にある。イオンモールの中にある普通の店だが、「クリスマスブレンド」の販売数は9年連続で日本一だ。それ以外の時期でも他店平均の5倍以上もコーヒー豆が売れるという。なにが違うのか。その原動力は55歳と52歳のふたりの「パートの主婦」だった――。
スターバックス コーヒー イオンモール苫小牧店で働く、山田奈津子さん、鈴木美左子さん、店長(取材時)の野田なつみさん(人物左から/撮影=プレジデントオンライン編集部)

「クリスマス限定豆」が日本一売れる

現在、日本で最も店舗数が多いカフェチェーンは「スターバックス」だ。国内店舗数は1363店(2018年6月末現在)。2位の「ドトールコーヒーショップ」は1122店(2018年5月末現在)で、200店以上も差をつけている。

そんなスタバが、力を入れているのが「コーヒー豆の販売」だ。単価が高く、座席を占有せずに売り上げを伸ばせるため、注力する店は多い。なかでも最大の商戦となるのが年末の「クリスマスブレンド」だ。

店頭で真っ赤なパッケージを見たことがあるかもしれない。冬の期間限定商品で、昨季の価格は豆250グラムで1430円。この販売数で9年連続日本一というカリスマ店舗がある。北海道苫小牧市の「スターバックス コーヒー イオンモール苫小牧店」だ。

同店は決して特別な店ではない。むしろ普通の店だ。コーヒー豆以外のドリンクやフードの販売数は平均的。ただし「クリスマスブレンドの販売期間中は他店平均の7倍、通常の定番豆も5倍以上売れる」(同社)という。なぜ、これほど売れるのか。その秘密を知るために現地を訪れた。

巨大モールの開業で消費動向が変わった

苫小牧市は人口17万1743人(2018年6月末現在)。少子高齢化の時代でも、10年前の人口数を維持している。かつては製紙業で栄え、現在は札幌都市圏や新千歳空港に近い利便性から、港湾都市・工業都市として存在感を発揮しており、道内でも元気な都市だ。

市内の郊外にイオンモールが開業したのは2005年で、スターバックスも当初から出店。国内の他の地方都市と同じく、巨大モールの開業で消費動向が変わり、近隣地域から買物客が訪れるようになった。今回、「室蘭に勤務していた時代、そこに行けば何でも揃う『苫小牧のイオン』に、週末はよく足を運んだ」(道内の30代会社員男性)という声も聞いた。