スターバックスは国内でもっとも店舗数が多いカフェチェーンだ。その数は、約1340店。店が多くなれば、接客レベルもバラつくはずだが、スタバの接客には定評がある。なぜ社員からアルバイトまで、「意識の高さ」が徹底されているのか。プレジデントオンラインでは、スタッフがコーヒーの知識と接客技術を競う「コーヒーアンバサダーカップ」に潜入取材。その秘密を探った――。
2月22日に開催された「コーヒーアンバサダーカップ」。壇上に17人の"ブラックエプロン”が並ぶ。(編集部撮影)

1300店超の「国内最大のカフェチェーン」

多くの会社や学校が新年度となり、仕事の打ち合わせや友人・知人との懇談にカフェを使うケースも増えそうだ。日によっては、テラス席が心地よい時季になった。

ところで日本国内のカフェチェーンで、最も店舗数が多いのはどこかご存じだろうか。正解は「スターバックス」で1342店となっている(2018年3月末現在)。2位は「ドトールコーヒーショップ」の1124店(2018年3月末現在)、3位が「コメダ珈琲店」で805店(2018年2月末現在)だ。

筆者はこの3店を何度も記事で取り上げてきた。時々店舗数も紹介したが、スタバの拡大ぶりに目を見張る。かつては店舗数が上だったドトールを逆転し、現在は約200店も差がついたのだ。これだけの数を支えるには、各店スタッフの力量が欠かせない。外食店が急拡大した後に業績悪化するのは、店舗拡大に人材育成が追いつかない=サービスレベルの低下も多いのだ。そのため、各社それぞれの工夫で接客レベルを高めようとする。

今回は、スタバの「社内接客競技会」に焦点を当てつつ、その狙いを考えたい。

10年で3倍増の「ブラックエプロン」

2月22日、東京都内で「コーヒーアンバサダーカップ」と呼ばれる大会が行われた。スターバックスの従業員がコーヒーの知識と接客技術を競う社内競技会の本選(決勝大会)で、参加したのは各エリアの予選会を勝ち抜いた17人だ。

通常、同社の店舗スタッフの多くは「グリーンエプロン」(緑色のエプロン)を着用して接客する。これは利用者には知られたスタイルだ。だが、中には黒い「ブラックエプロン」で接客するスタッフもいる。今回の参加者全員はこのエプロンの保持者だ。アルバイトも参加でき、前回大会では男子大学生が優勝した。

「ブラックエプロンは、年に1度、コーヒーに関する幅広い知識、コーヒー豆の特徴などを問う試験を実施して合格した人だけに与えられるものです。受験者も合格者も年々増えており、2009年は1万1641人が受験し、合格者は412人(合格率3.5%)でしたが、2018年は1万9205人が受験して2499人が合格(同13%)と、パートナー(従業員)のコーヒーへの関心度は高まっています」(広報担当者)

ブラックエプロンは“デキる人”の証しといえるが、合格者も10年前に比べて3倍増となった。会社としては希少価値よりも関心度を高めて、従業員全体を底上げしたい思惑のようだ。その理由は後述する。