“お客役”を前に接客プレゼン

本選と呼ばれる決勝大会では、4つの競技が実施された。(1)コーヒーの香りで銘柄を当てる、(2)コーヒーを抽出しながらその“ストーリー”をプレゼンする(3)接客サービス、の3種目だ。

会場には出場者以外に、各地区の応援者もかけつけ、「私たちの代表」に声援を送る。本部は細かく関与せず、応援者は各エリアで決めると聞く。ちなみに司会者も同社社員が男女ペアで行う。こちらはコーヒーリーダーシップチームという部署が人選するそうだ。

各参加者が前述の(1)を答え、正解が発表されると会場が一喜一憂する。(2)では各人が会場に向かってプレゼンを行い、(3)ではお客役の社員を前に、出場者が会話をしながらコーヒーを提供する。その真剣さや会場の熱気が大会を支える。

お客役の社員に向けて、コーヒーをプレゼンしながら提供する出場者(編集部撮影)

ただし、筆者はJBC(ジャパンバリスタチャンピオンシップ)も取材して、プレゼンするプロのバリスタ(コーヒー職人)のすぐ前や横で、発表者のプレゼン内容やドリンクの味覚に審査員が厳しい視線を送る様子も見てきた。そうしたピリピリさとはまったく違う。もちろん同一視する気はないが、あくまでも「社内一体感」をねらいとした大会なのだ。

今回の優勝者には石黒歩美さん(南東京エリア代表)が選ばれ、「第15代コーヒーアンバサダー」となった。石黒さんは1年間、スターバックス コーヒー ジャパンの顔として啓発活動にも参加する。優勝賞金はないが、代わりに「アンバサダーエプロン」が授与される。コーヒー染めの茶色のエプロンで、「胸の部分に刺しゅうされているのは歴代アンバサダーの名前」だという。

また、後日開催されるアジア地域の代表が集まる大会へ日本代表として出場するとともに、シアトルでの研修の機会も与えられる。

高時給ではないが人気の理由

大学生の間で「スタバのバイト」は大人気だ。人手不足で時給が高騰するなか、競合よりも時給は高くないが、それでも応募者は多い。見た目が格好よく、イメージもよいのだ。実際に採用されて働く店舗スタッフは、総じて生き生きと働くのも特徴。やる気のある人ほど、意識も変わり“自立・自走型”の人材にもなるようだ。

昨年・今年と、学生時代「スタバのバイト歴3年」だった20代女性(2人)に、別々の仕事で出会った。ともにコミュニケーション能力が高く、現在の仕事も前向きに取り組むタイプだ。スタバを「今でも大好きなブランド」と話し、その中の1人は、「ふだんの勤務店で経験を積んでから、高速道路のSA(サービスエリア)などにヘルプで行かせてもらえた。勤務店とはまったく違う、さまざまな客層への接客が勉強になった」と語った。さらに別の人事系の取材では、企業の採用担当者から「接客がきちんとしたスターバックスのアルバイト経験を長期間続けてきた人は、その点では高評価」という声も聞いた。